元謀原人

元謀原人（げんばくげんじん）

元謀原人は、中華人民共和国の雲南省楚雄イ族自治州元謀県で発見された、中国最古級の人類化石です。その発見は、中国における人類史研究に重要な影響を与えました。

発見

1965年5月、雲南省北部の山岳地帯に位置する元謀県老城郷上那蚌村の北西にある小高い丘で、2本のヒトの上顎門歯が発見されました。この発見が、元謀原人の存在を明らかにする第一歩となりました。

1973年には、歯の化石が発見された地点の近くの地層から、7つの石英製の石器、動物化石、そして炭化した火の使用痕跡が見つかりました。これらの発見は、元謀原人が石器を使用し、火を扱っていた可能性を示唆しています。

1976年7月25日、これらの化石は古磁気測定によって、約170万年前のものであると推定されました。この年代測定は、元謀原人が極めて古い時代に生息していたことを示しています。

概要

しかしながら、化石の年代については、約50万年から60万年前とする研究者も存在します。年代特定にはいまだ議論の余地があります。

歯の化石の裏側の形状から、元謀原人はアフリカからアジアに進出したホモ・エレクトスであると考えられています。歯の形状は、北京原人よりも古い特徴を持っています。

発見された石器は、その後の研究によって、歯の化石と同年代のスクレイパーであることが判明しました。これは、元謀原人が石器を用いて生活していたことを裏付ける証拠となります。

また、発見された動物化石は、歯の化石と同年代のものであり、そのほとんどが既に絶滅しています。これは、元謀原人が生息していた時代の環境を知る上で重要な情報となります。

元謀原人は、子孫を残さずに絶滅した系統であると考えられています。そのため、現代の中国人を含む東アジア人の直接的な祖先ではないと考えられています。（現代人の祖先がアフリカで誕生したのは約20万年前であり、アジアへの進出はさらに遅い時期であったと考えられています。）

雲南省南部での発見

2005年、雲南省文物考古研究所の調査隊は、雲南省南部の山地にある臨滄市滄源ワ族自治県勐省鎮の農克硝洞（標高1195メートル）で石器を発見しました。これらの石器は旧石器時代早期のものであり、元謀原人が170万年前に生息していた可能性をさらに高めるものです。

農克硝洞で発見された石器は、元謀原人と同じ年代に雲南省南部の山地で生息していた原人が製作した可能性が高いと考えられています。石器が発見された地層は、古くから地元住民が「竜骨」という漢方薬の材料となる化石を採掘していた場所でした。

発見された石器は、花崗岩や玄武岩製のスクレイパーや斧などです。石器の大きさは概ね10センチ程度で、形状は藍田原人のものに類似しています。

元謀原人の発見と研究は、中国における人類史研究に大きく貢献しています。今後の更なる研究によって、元謀原人の生態や進化、そして人類の起源に関する理解が深まることが期待されます。

関連項目

北京原人
藍田原人
周口店上洞人
石器時代
旧石器時代
新石器時代
先史時代
古代
* 古代中国

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