光 (エンジン)

光エンジンの概要

光エンジンは、日本の中島飛行機が開発した航空機向けの空冷星型エンジンであり、第二次世界大戦前から航空界で使用されてきました。このエンジンはバルブ駆動方式で、海軍には「光」として、陸軍には「ハ8」として採用され、両方の軍に搭載されました。エンジンの社内呼称は「NAP」です。

開発の経緯

陸軍の指導の下、光エンジンの開発は1931年（昭和6年）にスタートしました。このエンジンはアメリカのライト社製R-1820サイクロンEを参考にしており、1934年（昭和9年）にはハ8として正式に採用されました。その後、海軍向けの型も製作され、最大出力は730馬力から770馬力へと向上しました。これが光エンジンとして試作され、陸軍でもハ8Iと呼ばれました。開発にあたっては、ライト社の権利を侵害する部分があったため、1934年9月に製造権を購入しました。

総生産台数は、光エンジンが約20台、ハ8とハ8Iを合わせると約730台に達しました。1934年1月からは、ライト社のR-1820サイクロンFをほぼそのまま導入したエンジンの開発を行い、1935年4月に初号機が完成。その後、1936年1月15日には海軍に対して光発動機一型（直結型）と二型（減速式）が制式採用され、翌年には三型も採用されることになりました。陸軍ではこれらはハ8IIとして知られています。光発動機全型での生産台数は約1200台、ハ8IIは約200台生産されました。

設計上の問題

日本の技術者たちは、元のサイクロンの設計を単純に模倣するのではなく、排気量を増加させることで出力を向上させようとしました。これによりボア・ストロークが拡大し、160mmという大径ボアに至りましたが、これが不調の原因となることも多々ありました。例えば、川崎のハ9もこの大径ボアが問題視されています。しかし、ただボアを広げるだけでは成果が得られず、高オクタン燃料を用いた試験でも出力1000馬力には至らなかったのです。

機種による出力は異なり、原型とされるサイクロンは安定して1200馬力を発生させ、最終的には1500馬力を達成しました。

パテント問題

1937年（昭和12年）には、光エンジンを搭載した神風号が欧州飛行に成功した直後、ライト社が中島飛行機に対して発動機が彼らのものを模倣しているとするクレームを行いました。このため、製造権購入の契約に基づく中島技師の工場内での立ち入り禁止措置が取られました。中島側は神風号とライト製サイクロンとの違いを明示し、事態は解決しましたが、国際問題には至らなかったのが幸いでした。

主要諸元

光エンジンの各型は以下のように仕様が異なります。

光一型

• - タイプ：空冷星型9気筒
• - 筒径×行程：160 mm×180 mm
• - 排気量：32.6 L
• - 離昇馬力：730 hp
• - 公称馬力：600 hp

光二型

• - タイプ：空冷星型9気筒
• - 筒径×行程：160 mm×180 mm
• - 排気量：32.6 L
• - 離昇馬力：840 hp
• - 公称馬力：700 hp

光三型

• - タイプ：空冷星型9気筒
• - 筒径×行程：160 mm×180 mm
• - 排気量：32.6 L
• - 離昇馬力：770 hp
• - 公称馬力：710 hp

主な搭載機

光エンジンは以下のような機体に搭載されました。

• - 九三式二型双発軽爆撃機
• - 九四式偵察機
• - 九五式艦上戦闘機
• - 九六式艦上攻撃機
• - 九七式一型司令部偵察機
• - 九七式一号艦上攻撃機
• - 九七式艦上偵察機

このように、光エンジンは日本航空機の性能を高める重要な役割を果たしました。

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