九六式艦上攻撃機

九六式艦上攻撃機の概要と歴史

九六式艦上攻撃機は、日本海軍が開発した艦上攻撃機であり、略称は「九六艦攻」と呼ばれています。1936年に制式採用された本機は、前のモデルである一三式艦上攻撃機の後継機として設計されましたが、その過程は非常に厳しいものでした。

開発の背景

一三式艦上攻撃機に続く後継機として、海軍はやさしい設計と性能を求めました。そのため、八九式艦上攻撃機や九二式艦上攻撃機の開発が行われましたが、どちらも期待には応えられませんでした。そこで、海軍当局は「九試艦上攻撃機」として新たに設計を進めることにしました。中島、三菱、および空技廠の3社に試作を依頼した結果、最も実用的で堅牢な設計が空技廠製（B4Y）となり、優れた耐久性能を誇る機体が完成しました。

機体の特徴

九六式艦上攻撃機は、複葉固定脚機であることが特徴的です。上翼はパラソル配置で、機体中央には乗員のために3つの座席が設けられています。操縦士、偵察員、通信員の用に分かれた構造があり、後部の座席は密閉式風防を採用しています。機体の設計では、エンジンカウリングの大きさを抑え、なだらかな曲線を持つ胴体を実現したことで、空気抵抗が大幅に削減されました。そのため、以前の艦上攻撃機と比べて、性能面や運用面での向上が図られました。

しかし、当時は全金属製の単葉機が主流となっており、最高速度が時速300kmに届かなかった九六式艦上攻撃機は、戦争の激化とともにその出番が減少していきました。最終的には約200機が生産されたに過ぎません。

戦歴の詳細

1937年に勃発した第二次上海事変に際して、九六式艦上攻撃機は母艦部隊や基地航空隊に配属され、地上攻撃や偵察任務に従事しました。主な作戦行動では、パナイ号事件において水平爆撃によって敵艦を攻撃する場面も見られました。後に、九七式艦上攻撃機の導入に伴い、次第に第一線から退くこととなりますが、小型空母の搭載機や沿岸哨戒、練習機としても活動しました。

ミッドウェー海戦では、鳳翔を母艦とする九六艦攻が索敵任務に出撃し、敵艦艇の情報収集を行っていました。これにより得られた情報や写真は後の作戦に生かされることとなります。

技術的諸元

九六式艦上攻撃機の主要な技術的な特長は以下の通りです：

• - 全長: 10.15m
• - 全幅: 15.00m（主翼は折り畳み可能）
• - 全高: 4.38m
• - 自重: 1,825 - 2,000kg
• - 全備重量: 3,500 - 3,600kg
• - 発動機: 中島「光」二型空冷星型9気筒
• - 最大出力: 700馬力
• - 最大速度: 277km/h
• - 最小速度: 92.6km/h
• - 航続時間: 約8時間（最長1,574km）
• - 武器: 7.7mm機銃×2（機首固定・後部旋回）、魚雷または爆弾（500～800kg）
• - 乗員: 3名

ソードフィッシュとの比較

九六式艦上攻撃機とほぼ同時期に開発されたイギリスのフェアリー・ソードフィッシュとの比較は興味深いです。両機には似たような寸法とエンジン出力がありますが、性能においてはソードフィッシュが劣っていたと言えます。しかし、ソードフィッシュは戦争の初期においても成功した戦果を上げており、主にヨーロッパ戦線での戦闘によるものでした。

文学における九六艦攻

九六艦攻はフィクションにも登場します。「安松丸物語」では、特設空母がこの機体を用いてイギリス艦隊と交戦する様子が描かれています。また、「最後のト連送」などの漫画にも描かれ、文化的な側面からもこの機体の影響が見られます。

九六式艦上攻撃機は、その活躍が限られたものの、設計の優れた点や歴史的背景を持ち、現在でも多くの人々に関心を集めています。

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