入江俊郎

入江俊郎：法制官僚から最高裁判事へ

入江俊郎（いりえ としお）は、1901年1月10日に東京府で生まれ、1972年7月18日にその生涯を閉じました。彼は、官僚、政治家、そして裁判官として、日本の法曹界において重要な役割を果たしました。

生い立ちと初期のキャリア

入江は、府立三中、第一高等学校を経て、東京帝国大学を卒業しました。1924年に内務省に入省し、1927年には法制局参事官に就任。その後、法制局で要職を歴任し、そのキャリアを築き上げました。

日本国憲法立案への貢献

戦後の1945年、入江は法制局第一部長、次長を経て、1946年3月には法制局長官に就任しました。この時期、彼は日本国憲法の立案責任者として、その制定に深く関わりました。1946年5月には貴族院議員に勅選され、同和会に所属しましたが、貴族院が廃止される1947年5月まで在任しました。

国会と司法の舞台へ

帝国議会と貴族院の廃止後、入江は国立国会図書館の専門調査員を務めました。1948年7月には、芦田内閣の下で衆議院法制局長に任命され、国会運営に貢献しました。1950年には、第3次吉田内閣下で公職選挙法案に関する委員会にも出席しました。

1952年8月には衆議院法制局長を辞任しましたが、その直後の8月30日、吉田茂内閣によって最高裁判所判事に任命されました。当時51歳という若さでの就任は、最高裁内部からの反発もありましたが、最終的に内閣は入江の起用を決定しました。最高裁判事としては、苫米地事件、チャタレー事件、砂川事件、八幡製鉄事件、練馬事件、朝日訴訟など、数々の重要な裁判に関与しました。

国民審査と退官

入江は、1952年と1963年の2度にわたり最高裁判所裁判官国民審査を受け、いずれも信任されました。1963年の審査では、同時に審査された9人の裁判官の中で、罷免を可とする票が最も多かったものの、信任されました。入江以降、2度国民審査を受けた最高裁判事はいません。1971年1月9日、入江は定年により退官しました。最高裁判事としての在任期間は18年5ヶ月（6707日間）であり、これは歴代1位の記録です。

退官後の活動と学術的貢献

退官後、入江は駒澤大学の教授として教鞭を執りました。また、短歌の世界では山下陸奥に師事し、『一路』という短歌会に参加、1960年には歌会始で召人を務めるなど、文化的な側面でもその才能を発揮しました。

栄典と著書

入江は、1940年に紀元二千六百年祝典記念章を授与され、1971年には勲一等旭日大綬章を受章、1972年には従二位を叙されました。著書には、『ユス・プレトリウムの研究 羅馬私法進化論』、『自治政策』、『新憲法の実踐』、『日本国憲法読本』、『国会と地方議会』などがあり、憲法に関する深い知識と考察が窺えます。また、共著として『逐条市制町村制提義』や『逐条地方自治法提義』などがあります。これらの著書は、法学研究者や実務家にとって貴重な資料となっています。

入江俊郎は、日本の法制史において、その業績と影響は計り知れません。彼の生涯は、官僚、政治家、裁判官としての多岐にわたる活動を通じて、日本の民主主義と法治主義の発展に大きく貢献した人物として、後世に語り継がれるでしょう。

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