入浜権

入浜権とは

入浜権（いりはまけん）とは、河川、海岸、海洋などに対して、原則としてすべての人が自由に立ち入り、海水浴などの自然の恵みを享受できる権利を指します。

入浜権の位置づけ

入浜権は、日照権や眺望権と同様に、環境権の一部と捉えられています。しかし、海岸は埋め立てなどによって地形が変化したり、船舶が通行したりすることもあるため、権利の行使には一定の調整が必要です。

プライベートビーチについて

原則として誰もが利用できる海浜ですが、例外的に所有者や管理者など、特定の関係者のみが利用できる海浜も存在します。これらは一般にプライベートビーチと呼ばれています。

日本における入浜権

日本国内においては、入浜権は法律で明文化された権利ではありません。しかし、一部地域では条例によって入浜権に類似する権利が定められている場所もあります。

条例による規定の例

沖縄県では、リゾートホテルなどがプライベートビーチを所有し、一般の人が海浜に立ち入れなくなる事態を防ぐため、1989年に海浜の自由使用に関する条例が制定されました。この条例では、事業者が公衆の自由な立ち入りに配慮する義務を定め、違反した場合は知事が勧告や公表を行うことができるとしています。

入浜権に関する過去の事例

過去には、入浜権をめぐるいくつかの特徴的な事例が存在します。

入浜権運動

1973年、兵庫県高砂市で、高度経済成長によって発生した公害を告発する住民運動が起こりました。この運動の中で、住民は企業が占有する海岸に立ち入れなくなったことから、海岸の自由使用権を求める「入浜権運動」を展開しました。

1975年には「古来、海は万人のもの」というスローガンを掲げた入浜権宣言が採択され、運動は全国に広がりました。しかし、入浜権をめぐる裁判では、海岸や海浜は国が管理する自然公物であるという考え方が採用され、入浜権は否定されました。

長浜町入浜権訴訟

1978年、愛媛県喜多郡長浜町（現・大洲市）において、長浜海水浴場の一部を改変して沖浦漁港を建設する計画が持ち上がりました。これに対し、住民は海水浴場の一部が利用できなくなるとして、漁港建設のための公金支出差し止めを求める訴訟を提起しました。

裁判の結果、海水浴場の一部が利用できなくなることは認められたものの、漁港の移設が船舶の出入りを困難にする点や、漁港が事実上の防波堤として海水浴場利用者にとって有利になる点などが考慮され、原告側の敗訴となりました。

まとめ

入浜権は、自然の恵みを享受するための重要な権利ですが、その具体的な内容は、法律や条例、判例などによって解釈が異なり、状況に応じて調整が必要となる場合があります。今後の社会において、入浜権がどのように発展していくのか、注目されます。

関連項目

新しい人権
環境法
環境問題
環境主義
生存権
幸福追求権
人格権
地役権
第三世代の人権
自然享受権

外部リンク

* 『入浜権』 - コトバンク

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