全久院 (豊橋市)

全久院の概要と歴史

全久院（ぜんきゅういん）は、愛知県豊橋市にある曹洞宗の寺院で、山号は仙壽山（仙寿山）です。この寺院は、宗光として知られる戸田全久入道や、彼の妻である松姫（徳川家康の異父妹）の菩提寺とされています。全久院の本尊は釈迦如来の坐像です。

歴史的背景

全久院の開創は室町時代に遡ります。僧の克補契嶷によって大洞山泉龍院の末寺として設立され、当初は戸田氏中興の祖とされる戸田全久入道を供養するための寺院でした。戸田氏は清和源氏の系統を引く家系で、愛知県名古屋市の戸田荘を本拠地としました。伝承によれば、全久入道の父は正親町三条家から養子に迎えられた戸田綱光であったとされています。

寛正6年（1465年）、細川成之からの要請を受け、室町幕府第8代将軍・足利義政の命によって、戸田宗光とその義父・松平信光が「額田郡牢人一揆」の鎮定に動きました。この乱が収束した後、戸田全久入道は勢力を拡大し、応仁の乱の末期には東三河へ進出します。文明7年（1475年）には、渥美郡大津村にある大津城へ入城し、次々と城を築きました。この際の敵対者は、牧野古白入道の牧野氏でした。

永正5年6月19日（1508年）、戸田全久が亡くなった後、彼の嫡男・戸田憲光は、1514年に菩提寺を建立させます。ここで克補契嶷禅師に開山を請い、全久院が建立されました。憲光の孫である戸田康光は後に牛久保城へ移り、1546年に牛久保に全久院を新たに設立しました。この新しい全久院は、家の墳墓地としても利用されました。

全久院に埋葬された松姫は、戸田康長の妻であり、徳川家にとっても重要な人物とされています。天正18年（1590年）、三河を去る戸田家は厳しい状況にあり、荒廃していた牛久保の全久院を現在の豊橋市に移転しました。

明治4年（1871年）、戸田宗家の戸田光則が神道を重視し、松本にあった全久院を破却。これにより、多くの貴重な文化財が豊橋の全久院に引き継がれました。昭和の太平洋戦争では、豊橋空襲によって山門が焼失し、その後も双葉保育園を運営していましたが、現在は一般檀家のある寺院として地域に根付いています。

文化財と展覧会

全久院には重要文化財がいくつか存在します。中でも「正法眼蔵」の一部である『山水経第29巻』『十方第45巻』は、宗祖道元の筆によるものとされています。また、曹洞宗の第二祖である懐奘の真筆本『寶慶記』や道元の筆による『羅漢供養式稿本残巻』も重要な文化財です。

さらに、全久院では佐藤司の作品を展示する「佐藤司没後二十年展」など、地域の文化活動も行われています。

アクセスと周辺施設

全久院へは豊橋鉄道東田本線の東田停留場または東田坂上停留場からアクセス可能です。所在地は愛知県豊橋市東郷町117番地で、周辺には同名の寺院が全国に存在し、さまざまな関連施設があります。例えば、豊橋市立東田小学校や長興寺、龍拈寺などが挙げられます。

全久院は、愛知県内における曹洞宗の重要な寺院の一つであり、多くの信者や文化財を守り続けている存在です。

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