正親町三条家

正親町三条家（嵯峨家）の歴史：公家から華族へ

正親町三条家、後に嵯峨家と改称したこの家系は、藤原北家閑院流三条家の庶流にあたり、代々朝廷に仕えた名門公家です。鎌倉時代前期、左大臣三条実房の三男である権大納言公氏を家祖とし、当初は三条家を称していました。しかし、屋敷が正親町東洞院に位置していたことから、本家との区別のため「正親町三条家」と呼ばれるようになりました。

正親町三条家は、当初は正二位権大納言を最高の位階としましたが、5代公秀の娘である秀子（陽禄門院）が光厳天皇の后となり、崇光天皇と後光厳天皇の生母となったことで、家格は内大臣にまで昇進します。その後、公秀の子実継、孫の公豊も内大臣に上り詰めたことで、大臣家の家格が確立されました。

室町時代には、10代実雅の妹である尹子が足利義教の正室となったことで足利将軍家との関係を深めます。実雅自身も義教の寵愛を受け権勢を誇りましたが、嘉吉の変では義教を警護中に負傷するも、太刀を抜いて防戦したと伝えられています。

江戸時代には200石の所領を持ち、内椹木町寺町西に屋敷を構えていました。家臣には千葉家や加田家などがおり、近衛家の家札を所持。家業は四箇の大事や有職故実といった伝統的な儀式や制度に関する知識を継承していました。菩提寺は松林寺です。江戸中期には、23代公積が垂加神道を学んだ尊皇家として知られますが、宝暦事件で幕府の弾圧を受けました。しかし明治維新後、公積の尊皇の功績が認められ、明治天皇より従一位を追贈されています。

明治維新後、正親町三条家は華族に列し、28代当主実愛は議奏や国事御用掛を務めました。当初は公武合体の立場をとっていましたが、尊皇攘夷派との対立を経て、王政復古や討幕に貢献、新政府では要職を歴任します。明治2年には賞典禄1000石を下賜され、明治3年には家名を嵯峨家に改めました。

明治維新後の家禄は298石で、金禄公債の支給額は2万3997円39銭9厘でした。明治14年に実愛は隠居し、家督を息子公勝に譲りますが、その後も宮内省に出勤するなど精力的に活動しました。明治17年の華族令施行により、公勝は伯爵に叙せられます。しかし、大臣家であるにもかかわらず伯爵であったこと、また維新の功績で高い爵位を受けた他の華族との待遇の差に不満を持った実愛は、公勝の侯爵への昇爵を太政大臣三条実美に請願し、明治21年に願いが叶い、公勝は侯爵に昇爵しました。

嵯峨家の財産は乏しかったため、公侯爵の特権である貴族院議員の活動費の捻出には苦労したと伝えられています。30代実勝の長女である浩は、満洲国皇帝溥儀の皇弟溥傑と結婚したことで、皇室とのつながりがさらに深まりました。

この家系は、代々朝廷や政府の中枢に身を置き、日本の歴史に大きな足跡を残しました。公家としての伝統を守りながら、近代日本の変革期にも重要な役割を果たした、名門嵯峨家の歴史は、日本の歴史を理解する上で貴重な資料となります。傍流や別系についても、それぞれの系譜をたどりながら、その歴史を詳細に調査していく必要があります。 今後の研究によって、より詳細な歴史が明らかになることが期待されます。また、関係者や関連資料のさらなる調査を通じて、この家系の歴史をより深く理解することができるでしょう。

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