全日空貨物機失踪事故

全日空貨物機失踪事故

1965年（昭和40年）2月、全日本空輸（全日空）の貨物機が巡航中に消息を絶ち、後に墜落していたことが判明した航空事故です。機体発見まで22ヶ月を要し、発見場所も当初の捜索範囲から大きく離れていたため、多くの謎を残しました。

事故の概要

全日空のダグラスDC-3型貨物機（機体記号JA5080）は、1965年2月14日未明に失踪しました。当時、全日空は郵便物などを輸送する深夜貨物便を運航しており、事故機は144個、1,870kgの貨物を積載して午前3時50分に大阪国際空港を離陸しました。積荷には、世界的タンゴ楽団アルフレッド・ハウゼ・タンゴオーケストラの東京公演で使用する楽器が含まれており、これは全積載貨物の3分の2を占めていました。

午前4時25分、事故機は「愛知県知多半島河和VOR通過、同4時39分浜松通過見込み」と東京の航空交通管制本部に連絡したのを最後に消息を絶ちました。午前5時45分に羽田空港へ到着する予定でしたが、搭載燃料が4時間分しかなかったため、遭難が確実となり、大規模な捜索が開始されました。なお、楽器を失った楽団は、NHK交響楽団から楽器を借りて公演を成功させました。

失踪宣告

当初、貨物機は知多半島から遠州灘沿岸部で遭難したと推定されました。最後の通信直後に墜落した可能性や、通信機故障で遠くまで飛行した可能性も考慮され、捜索範囲は絞り込めませんでした。最初の捜索では、知多半島南側海域で残骸を発見したとの報告がありましたが、海上保安庁の捜索で誤報と判明しました。

その後、紀伊半島から房総半島にかけて大掛かりな捜索が行われましたが、機体は発見されず、10月に南アルプスでの捜索を最後に打ち切られました。航空自衛隊の隊員が午前4時45分頃にプロペラ音を聞いたという報告もありましたが、機体の最期は不明のままでした。全日空は、航空法に基づき、JA5080機を登録抹消し、搭乗していた機長と副操縦士については、民法に基づき失踪宣告の手続きを行いました。

航空関係の文献には「貨物機自体に失踪宣告が行われた」との記述がありますが、これは乗員の失踪宣告と混同した誤りである可能性が高いです。

発見

JA5080の残骸が発見されたのは、事故発生から22ヶ月後の1966年12月29日でした。発見場所は、捜索範囲から大きく離れた、浜松市北北東約70kmの南アルプス中ノ尾根山の標高2200m付近でした。鹿狩りのハンターが雪の中から残骸を発見し、フライトプランなどの遺留品からJA5080機であることが判明しました。機体は空中分解したかのようにバラバラになっており、乗員2名の遺体も機体残骸の下から発見されました。

事故原因

墜落したDC-3型機には、ブラックボックスが搭載されていなかったため、事故原因は不明です。事故当日は気象状態が悪く、事故機は雷雨のため離陸が遅れていました。離陸後も、名古屋地方が猛烈な雷雨に見舞われており、機体が左に大きく旋回して山奥に墜落したのは、雷雨と突風の中で計器が誤作動したか、ウインドシアや雷の直撃を受けたためではないかと推測されていますが、いずれも確定には至っていません。

注釈

特になし

参考文献

* 朝日新聞、1965年2月14日付夕刊および2月15日付朝刊。1966年12月30日朝刊。

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