八幡神社 (中津川市千旦林)

坂本神社八幡宮について

坂本神社八幡宮（さかもとじんじゃはちまんぐう）は、岐阜県中津川市千旦林に位置する神社です。この神社は、古くは式内社である坂本神社と同一であるとされていました。しかし、現在では、坂本神社は坂本神社八幡宮と坂本神社諏訪社の二社が論社となっています。

祭神

坂本神社八幡宮には、以下の三柱の神様が祀られています。

大山祗大神（おおやまつみのおおかみ）
帯中日子命（たらしなかつひこのみこと）
誉田別命（ほんだわけのみこと）

歴史

この神社の起源は、神坂峠の道中安全を祈願するために大山祗大神を祀ったことに始まります。大宝2年（702年）には、豊前国の宇佐神宮から勧請を受け、社殿が建立されたと伝えられています。延喜式には、坂本神社の他に中川神社、恵那神社の三社が記載されています。

時代は不明ですが、豊前国宇佐八幡宮を勧請、合祀したことで、坂本神社八幡宮と改称されたと考えられています。坂本神社諏訪社の社伝によると、坂本神社は延文2年（1357年）に野火で社殿が焼失した後、遷座して諏訪神社となったと記されています。このことから、坂本神社八幡宮となったのは南北朝時代頃と推測されます。

その後、天正2年（1574年）には、武田勝頼による東濃侵攻の際、戦火により焼失しましたが、天保3年（1832年）に現在の社殿が再建され、復興を遂げました。

明治時代初期には、坂本神社の論社が坂本神社八幡宮であるか、坂本神社諏訪社であるかについて論争が起こりました。しかし、最終的な結論は出ず、両社とも坂本神社の名前を使用せず、「八幡神社」「諏訪神社」を正式名とすることになりました。現在では、通称として八幡神社は「坂本神社八幡宮」、諏訪神社は「坂本神社諏訪社」と呼ばれています。

元々、坂本神社八幡宮の地に坂本神社が鎮座していましたが、鎌倉時代から南北朝時代の頃に焼失し、移転したのが坂本神社諏訪社。元の坂本神社の地に再建されたのが坂本神社八幡宮とされています。

周辺の遺跡

坂本神社八幡宮の森の北の丘陵には、鎌倉時代から室町時代にかけての窯跡が多数発見されており、その一部は岐阜県の史跡に指定されています。この地域一帯からは、鎌倉・室町時代の白瓷系陶器（山茶碗）の破片が多数採集されています。また、五輪塔や宝篋印塔も各所に見られ、西垣外遺跡からは中世の住居跡や関係遺物も出土しており、この地域が中世において重要な場所であったことを示唆しています。

別当寺・付属寺

坂本神社八幡宮には、かつて以下の別当寺や付属寺がありました。

大林寺：坂本神社八幡宮の別当寺でした。
願生寺：江戸時代には、坂本神社八幡宮の前に天台宗の願生寺がありました。明治時代の神仏分離令により廃寺となり、跡地には小学校が設立されました。
普門院：坂本神社八幡宮の傍らに存在した付属寺です。長野県の熊野神社に残る鰐口に普門院に関する記述が残っています。この鰐口は、文明18年（1486年）に信濃小笠原氏が恵那郡中部を占領した際に、奪い奉納されたとされています。

また、「美濃御坂越記」には、この他にも大善院、玉円坊、下ノ坊、仙福院、妙音庵、長善庵、政所といった諸坊が存在していたと記されています。

美濃御坂越記における記述

「美濃御坂越記」には、坂本神社八幡宮について以下のように記されています。

八幡宮は、村の中央の街道の北側、松山の中にあります。社内には木像が十三体あり、僧保沢が観応3年9月に作ったものです。社壇は南向きで、街道沿いに大門と鳥居があります。東側には神主の屋敷、西側には大智山願成寺という別当寺の天台宗の屋敷があります。普門院、大善院、玉円坊、下ノ坊、仙福院、妙音庵、長善庵、政所という八ヶ所の坊は、田地の畔にあります。神主と別当の屋敷は、森の中にあるため、田畑にはならず、石垣の古跡が残っています。遠山氏が繁栄していた頃には、山城国の男山八幡宮を模して、美しく荘厳な建物が建っていました。天正2年の阿寺落城の際には、坊舎は焼失し、神領は没収され、神主や社僧は逃走しました。殿舎は破壊され、現在は本社一宇を残すのみです。社名帳によれば、美濃国恵那郡の三社の中で、坂本神社はこの神社であると考えられます。郡内に坂本という場所は他にないため、この神社が由緒ある神社だと考えられます。

文化財

坂本神社八幡宮には、中津川市指定の文化財があります。

木造狛犬一対
木造御神体像

また、境内にあるヒトツバタゴは、中津川市指定の天然記念物となっています。

所在地と交通

所在地：岐阜県中津川市千旦林642
交通機関：
中央本線美乃坂本駅より約2km
東鉄バス中津川線「千旦林」バス停下車、徒歩10分

まとめ

坂本神社八幡宮は、中津川市に鎮座する歴史ある神社です。古代から中世にかけての歴史と信仰が今もなお息づいており、地域の文化を語る上で欠かせない存在です。

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