神坂峠

神坂峠（みさかとうげ）

神坂峠は、木曽山脈南部に位置し、岐阜県中津川市と長野県下[[伊那郡]]阿智村の境にあります。標高は1,569mで、木曽山脈の主稜線である富士見台と恵那山の鞍部に位置しています。この峠は、木曽川水系の落合川と天竜川水系の阿知川の分水嶺となっています。

概要

岐阜県側からは林道大谷霧ヶ原線で峠まで車でアクセス可能ですが、長野県側の峰越林道は崩落の危険があるため、一般車両は通行禁止となっています。神坂峠は、胞山（恵那山）県立自然公園の一端を担っており、豊かな自然に囲まれています。

歴史

神坂峠は、古代には信濃国と美濃国の境に位置し、東山道が通る交通の要所でした。その険しい道程から、東山道第一の難所として知られ、「神の御坂」とも呼ばれていました。峠を越える際に命を落とす旅人や、盗賊に襲われる旅人も多かったと記録されています。その後、東山道（中山道）が木曽谷を通るようになり、神坂峠を通る人は減少しました。

斉衡2年（855年）の記録には、峠前後の駅間距離が非常に長く、駅馬の数も多かったことが記されています。これは、峠越えがいかに困難であったかを物語っています。

神坂峠の頂上付近からは、古代の祭祀に使われた滑石製の鏡や刀子、勾玉などの祭祀遺物や、須恵器、土師器などの土器が多数出土しており、「神坂峠遺跡」として国の史跡に指定されています。これらの出土品は、阿智村の中央公民館で保管・展示されています。

平安時代初期には、伝教大師最澄が、峠のあまりの険しさに驚き、旅人のために「お救い小屋（広済院と広拯院）」を設けたという記録も残っています。

古典文学に登場する神坂峠

神坂峠は、多くの古典文学にも登場します。

『日本書紀』には、日本武尊が神坂峠で山の神と戦ったという伝説が記されています。
『万葉集』には、神坂峠で神に祈りを捧げる歌が詠まれています。
『古今和歌集』や『源氏物語』には、神坂峠の山麓にある園原という里と、歌枕にもなった「帚木」が登場します。
『今昔物語集』には、神坂峠で谷底に転落した藤原陳忠が、ヒラタケを抱えて生還したという逸話が載っています。
『雨月物語』には、神坂峠をモデルにしたと思われる場所で、山賊に襲われた話が描かれています。
長野県歌「信濃の国」にも、神坂峠の信濃側山麓にある園原が歌われています。

吉野拾遺に見る御坂（神坂）

後宇多天皇の崩御後に編纂された「吉野拾遺」には、後宇多天皇が木曾の御坂（神坂）のあたりを訪れた際の歌が記されています。この歌は、神坂峠の自然の美しさと、その場所が俗世を離れた隠遁生活を送るにふさわしい場所であることを表現しています。

東山古道

古代には「信濃坂」と呼ばれたこの峠道は、東山道の一部でした。その後、中山道が整備され、神坂峠を通る人は減りましたが、現在では東山古道として、登山道が整備されています。また、中央自動車道の恵那山トンネルは、この峠の近くを通っており、中央自動車道の道筋もまた、奈良時代以前の東山道沿いのルートを辿っています。

周辺の山

神坂峠は、恵那山、富士見台高原、神坂山などへの登山口となっています。峠の近くには、山小屋「萬岳荘」があり、登山者の休憩場所として利用されています。

富士見台（富士見台高原） - 1,739m
神坂山 - 1,684m
大判山 - 1,696m
恵那山 - 2,191m

脚注

[参考文献]
　国学院大学　神坂峠の現状と景観

関連項目

藤原陳忠 - 今昔物語集の逸話で知られる。
日本の峠一覧
木曽山脈
恵那山トンネル - 本峠に近い。
中津川線 - 本峠の直下をトンネルで抜ける予定だった国鉄の未成線。
胞山県立自然公園
富士見台高原
園原

外部リンク

地図閲覧サービス（国土地理院）
* 国学院大学　神坂峠の現状と景観

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