八王子自転車競技場

八王子自転車競技場の歴史と役割

八王子自転車競技場（はちおうじじてんしゃきょうぎじょう）は、日本の自転車レースの歴史において特別な位置を占める場所でした。この競技場は、1964年に開催された東京オリンピックのために建設され、主に自転車競技トラックレースの会場として利用されました。初めてのオリンピック開催に向けて、日本国内での競技場の設置場所については様々な案が検討されました。

当初は芝浦に新設する案や、既存の後楽園競輪場を活用する提案がありましたが、最終的には八王子市が選ばれました。これは、周回コースとして36kmのロードレースコースも設けることが決まったからです。こうして、八王子市の長房町に自転車競技場が設立されることとなりました。

競技場の規模は、400メートルの周回コースを有し、最大カントは45度、収容人数は約4100名でした。この施設は1964年8月に、東京オリンピックの開幕を控え完成しました。建設にかかった費用は約1億5千万円でしたが、この競技場はオリンピック終了後に取り壊されることが前提の仮設施設でした。現在、かつての競技場の跡地は陵南公園や住宅地として整備されています。

さらに、八王子自転車競技場には、甲州街道（国道20号）へと通じる道路沿いに仮設スタンドも設けられ、約3000名を収容可能でした。これにより、オリンピック中に多くの観客が競技を観戦できる環境が整えられました。

ここで競技を行った選手の中には、後に名声を得ることとなる運動者たちが多くいます。特に、金メダリストとして知られるベルギーのパトリック・セルキュや、フランスのダニエル・モレロン、ピエール・トランタンなどがその名を轟かせました。モレロンは、東京オリンピックでスクラッチで銅メダルを獲得後、1968年と1972年のオリンピックでも連続して勝利を掴むことになります。また、イタリアのセルジョ・ビアンケットや、イギリスのヒュー・ポーター、デンマークのニールス・フレッドボーグといった選手たちもこの地で競技を行いました。日本測定選手としては、班目秀雄や河内剛、山藤浩三などが名を連ねています。

参考までに、東京オリンピックのロードレースには、後にツール・ド・フランスやジロ・デ・イタリアで多くのタイトルを獲得することになるベルギーのエディ・メルクスや、イタリアのフェリーチェ・ジモンディも参加しました。これらの選手たちの活躍は、後世に語り継がれることとなります。

また、八王子自転車競技場にはオリンピック選手村の分村も設けられました。分村はプレハブで作られ、総面積は7,700平米に及びました。この施設には、384名分の宿泊施設、120名が同時に食事を取れるレストラン、郵便局、電話局、談話室、医務室、理容室などが備わっており、選手たちの便宜を図るための重要な拠点となりました。オリンピック終了後には、これらの施設も解体され、跡地は新たな形で地域社会に還元されることになります。

このように、八王子自転車競技場は1964年のオリンピックにおいて重要な役割を果たし、その歴史的意義は今もなお多くの人々に語り継がれています。

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