八軒家船着場

八軒家船着場：大阪水運の歴史と再生

八軒家船着場は、かつて大阪府大阪市中央区天満橋京町・北浜東に位置した係留施設です。ここでは、旧淀川（大川）左岸にあった八軒家浜の歴史と、その名を受け継ぎ2008年に開設された八軒家浜船着場について解説します。

歴史：渡辺津から八軒家浜へ

上町台地北端の西麓、天満橋と天神橋の間には、平安時代までに渡辺津（わたなべのつ）と呼ばれる外港が形成されました。渡辺津は、大江、国府津、窪津、楼津とも呼ばれ、摂津国の政治中心地として栄えました。また、四天王寺、住吉大社、高野山、熊野三山への参詣道である熊野街道の起点として駅楼が置かれ、海陸交通の要衝として発展しました。

大阪平野の形成とともに河口が西へ移動し、渡辺津は河港へと姿を変え、遷都などの影響で外港としての役割は縮小しました。しかし、寄港地としての機能は近世以降も維持されました。

江戸時代になると、この地には船宿が8軒並び、「八軒家浜」と呼ばれるようになります。伏見と大坂を結ぶ三十石船のターミナルとして、淀川舟運の重要な拠点となりました。当時の八軒家浜の様子は、多くの文芸・美術作品に描かれています。

十返舎一九の『東海道中膝栗毛』第八編には、弥次郎兵衛と北八が「大坂の八軒家」で上陸する場面があります。また、『摂津名所図会』の「八軒屋」や、浪花百景の「八軒屋夕景」もよく知られています。

明治時代以降、舟運は衰退しましたが、1911年には大阪市電今橋天満橋筋線が土佐堀通に敷設されました。1923年から1944年まで、御祓筋（熊野街道）との交差点には、同線単独の八軒家停留場が設置されていました。

八軒家浜船着場：水都大阪の再生拠点

「往時の八軒家浜の賑わいを水都大阪の再生の拠点とするため」、大阪市によって2008年3月29日に八軒家浜船着場が開設されました。2009年8月1日には、観光船案内所、情報発信スペース、レストランを備えた「『川の駅』はちけんや」がオープンしました。

現在の八軒家浜船着場は、大川左岸の埋立造成地および将棊島があった場所に位置しており、土佐堀通にあった往時の八軒家浜とは場所が異なります。

大阪水上バス、遊覧観光船、屋形船などが発着し、岸壁には3隻の船が同時に着岸可能です。大川沿いには、天神橋まで続く遊歩道が整備されています。

アクセス

八軒家浜船着場は、天満橋駅に隣接・直結しており、アクセスも便利です。

鉄道
天満橋駅
京阪本線・中之島線
地下鉄谷町線
バス
「天満橋」バス停
大阪シティバス：10号系統・21号系統・31号系統・46号系統・62号系統
定期観光バス『OSAKA SKY VISTA』（近鉄バス）：降車のみ可能（乗車はJR大阪駅高速バスターミナルのみ）

八軒家船着場は、歴史的な水運の面影を残しつつ、現代の大阪の観光を支える重要なスポットとなっています。水都大阪の魅力を満喫できる場所として、多くの人々に親しまれています。

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