典圜局

典圜局：李氏朝鮮の造幣機関

典圜局（てんかんきょく、전환국）は、1883年（高宗20年）に李氏朝鮮後期に設立され、1904年（光武8年）に廃止された造幣機関です。当時の財政危機を打開し、混乱した通貨政策を立て直すことを目指して設立されました。

設立と初期の活動

初代典圜局は、ソウル（漢城）の昌徳宮の近くに設置され、閔泳翊がその管理を担当しました。最初に鋳造された貨幣は、當五銭貨幣でした。1886年には、世昌洋行を通じて近代的な鋳造設備を導入し、機械と技術者をドイツから招きました。1888年には、ソウルの南大門内に3棟からなるレンガ造りの工場を建設しました。

移転と新貨幣発行の試み

その後、典圜局は支援をドイツから日本に切り替え、1892年に仁川に移転しました。しかし、新貨幣発行を推進する開化派とそれに反対する旧守派の対立、日本側の内紛、そして清国からの干渉などが重なり、新貨幣事業は頓挫しました。朝鮮政府は外国への委託を断念し、1893年に再びソウル（現在の龍山区）の典圜局に戻り、自力での新貨幣発行を模索しましたが、これも実現しませんでした。

貨幣鋳造と財政への影響

1883年から1904年までの21年間で、典圜局が鋳造した貨幣の総額は18,960,658ウォン87銭に達しました。その中でも白銅貨が16,743,522ウォン65銭と、鋳造総額の88%を占めていました。しかし、白銅貨の過剰な発行と偽造、日本への密輸などによって国内の通貨量が急増し、貨幣価値が暴落、物価が急騰するという事態を招き、国家財政を圧迫しました。

典圜局の設立は、朝鮮社会に近代的な貨幣制度を導入する上で一定の役割を果たしましたが、悪貨の流通を防ぐことはできませんでした。1904年には、財政顧問に就任した目賀田種太郎によって典圜局は廃止され、その後、日本と同等の通貨制度が導入されることとなりました。

新貨幣発行の経緯

国際的に兌換性のない朝鮮貨幣は経済的に不利であり、国内では悪質な私鋳銭が横行して物価高騰を引き起こし、朝鮮経済は危機的な状況にありました。この状況を打開するため、朝鮮政府は外交顧問のパウル・ゲオルク・フォン・メレンドルフとマイヤー商会を通じてドイツに造幣機械を発注し、技術者もドイツから招きました。1888年4月には典圜局の建物も完成し、金・銀・赤銅貨の製造を開始しましたが、原材料の国内産出量が少ない上、世界的な銅価格の高騰があり、旧銭を回収して改鋳しようとしたところ、銅銭の不足と価格高騰を招き、経済はさらに混乱したため、新貨幣の発行は中断されました。

1891年には、朝鮮国王の高宗が貨幣制度視察のため安駧寿を日本に派遣しました。安駧寿は政治家の林有造を通じて第五十八銀行頭取で大阪府議会議長の大三輪長兵衛と知り合い、大阪製銅の増田信之社長からは資金貸与の約束も取り付け、新貨幣発行事業が再開されました。大三輪は朝鮮政府に対し、全権委任と典圜局以外での鋳造の禁止、旧・新貨幣を引き換える交換局の設置などを提案し、自身は交換局会弁という総裁職に就任しました。1892年には、交通の便の良い仁川に新しい典圜局が建設されましたが、事業委託を奪還したいドイツは銀貨と紙幣を基軸とした幣制改革を朝鮮政府に迫りました。また、清国は宗主国への断りなしに日本に委託したことや、新貨幣に「大朝鮮」と刻印されたことを中華への侮辱であるとして事業中止と関係者の処罰を要求しました。さらに、平壌鋳造所の権益を持っていた閔氏（高宗の外戚）一派の反対や日本側でも大三輪と増田の対立が起こり、1893年1月、朝鮮政府は試運転を始めたばかりの典圜局の閉鎖を突然発表しました。同年10月、増田らから外された大三輪は交換局会弁を辞任し帰国しました。朝鮮政府は典圜局を再びソウルに戻し、同年12月、新貨幣発行を断念しました。

このように、典圜局は設立から廃止までの間、様々な困難に直面し、朝鮮の貨幣制度改革を成し遂げることはできませんでした。

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