内村ルツ子

内村ルツ子の生涯と影響

内村ルツ子（うちむら ルツこ）は、1894年3月19日に京都で内村鑑三とその妻静子との間に生まれました。彼女の名前は、父の信仰の源である旧約聖書の「ルツ記」に由来しています。ルツ子は非常に短い生涯を送りましたが、彼女の存在は後に大きな影響を及ぼすこととなります。

生い立ちと教育

ルツ子は1911年に実践女学校を卒業後、父が経営する聖書研究社で働き始めました。その職場では聖書に親しむ機会が多く、父の教えを受けながら成長していきました。しかし、彼女の幸せな日々は長く続かず、1911年の晩秋に原因不明の難病に苦しむことになりました。特に、ルツ子が12月4日に医師から死の宣告を受けると、彼女の家族は深いショックに包まれました。父内村は、娘のために最善を尽くそうとし、東洋宣教会の笹尾鉄三郎を招いて信仰面での指導を受けさせました。

最期の時

ルツ子はその後、命の終わりを迎えるまでの限られた時間を、大切な家族と共に過ごしました。彼女の臨終の3時間前には、両親と共に聖餐式に参加し、「感謝」「感謝」と言い残しながら「もう行きます」という言葉を発しました。そして、その言葉からわずか12分後に彼女は息を引き取りました。この日、1月13日には今井館聖書講堂で告別式が行われ、内村鑑三は「ルツ子の葬式ではなく、結婚式です」と述べました。彼にとって、ルツ子の死は新たな出発のように感じられたのかもしれません。

また、墓地に埋葬される際には、内村は手を高く挙げて「ルツ子さん万歳」と叫んだと伝えられています。この発言は、彼女への愛情と記憶の強さを表わしていると言えるでしょう。友人である本間俊平が墓石を手配し、内村が「また会う日まで」と刻んだことで、ルツ子の記憶は永遠に残されることになりました。

彼女がもたらした影響

内村ルツ子の死は、内村鑑三にとって非常に衝撃的であり、その後の信仰生活にも大きな影響を与えました。彼は後に明確な再臨信仰を持つようになり、1918年からは中田重治らと共に再臨運動を展開することになります。この運動は、内村の信念や思いを基盤に、多くの信者たちを巻き込む形で発展していきました。

ルツ子の死を契機に、モアブ婦人会が結成され、これは長い歴史を持つ組織となりました。彼女の存在は、単なる個人の生涯に留まらず、キリスト教界全体に影響を及ぼす重要な出来事となったのです。このように、内村ルツ子は短い生涯でありながら、その存在は時を超えて多くの人々に影響を与え続けています。

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