内藤豊次

内藤豊次の生涯

内藤豊次（ないとう とよじ）は、1889年（明治22年）8月15日に生まれ、1978年（昭和53年）3月20日に亡くなった日本の実業家です。彼は、製薬会社エーザイの創業者であり、その初代社長を務めました。

若年期と初期のキャリア

内藤は福井県丹生郡糸生村（現在の越前町）の出身です。1903年（明治36年）に武生中学校を中退しますが、当時既に旧制高等学校卒業程度の学力を有していたとされています。その後、1905年（明治38年）に大阪の工場で奉公し、翌年には神戸の貿易商ウインケル商館に勤務しました。この頃、パルモア英学院（現在のパルモア学院専門学校）にも通い、英語力を磨いています。

1909年（明治42年）から2年間は近衛師団歩兵第二連隊の衛生兵として兵役を務めました。除隊後、イギリス人が経営する薬局タムソン商会に入社し、その後、1915年（大正4年）には東京の田辺元三郎商店（現在の田辺三菱製薬）に移り、鎮痛剤のサロメチール、鎮咳剤のチミツシン、粒肝油のハリバなどの開発に携わりました。

エーザイ創業への道

内藤は、日本の医薬品業界が外国からの輸入に大きく依存している状況に危機感を抱いていました。彼は、日本国内でも新薬の研究開発に力を入れるべきだと考え、その実現のために、1936年（昭和11年）に田辺元三郎商店に在籍したまま「合資会社桜ヶ岡研究所」を設立しました。この研究所は、日本で初めてビタミンE剤などの開発・販売を手がけました。

1941年（昭和16年）には、桜ヶ岡研究所を存続させるために、軍需生産を目的とした「日本衛材株式会社」を埼玉県児玉郡本庄町（現在の本庄市）に創業しました。その後、1943年（昭和18年）に田辺元三郎商店を退職し、桜ヶ岡研究所と日本衛材の経営に専念。翌年には両社を合併し、日本衛材株式会社を設立。内藤は社長に就任し、本社を東京都小石川区竹早町88番地（現在の東京都文京区小石川）に移転しました。

エーザイへの改名と晩年

1955年（昭和30年）に日本衛材株式会社は「エーザイ株式会社」に社名を変更しました。1966年（昭和41年）には社長を退任し、代表取締役会長に就任。1969年（昭和44年）には、内藤記念科学振興財団を設立し、理事長に就任しました。1970年（昭和45年）に名誉会長となり、経営の一線から退きました。1978年（昭和53年）3月20日、88歳でその生涯を閉じました。

内藤豊次は、日本の医薬品業界の発展に大きく貢献した人物であり、その先見の明と情熱は、今日のエーザイ株式会社の礎となっています。

参考資料

* 内藤豊次 - 公益財団法人内藤記念科学振興財団

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