円目王

円目王：古墳時代の皇族とその一族

円目王（つぶらめのみこ）は、『令集解』に記される古墳時代の皇族です。「圓目王」とも表記されます。同書では、垂仁天皇の子であるとされていますが、雄略天皇の代にも同名の人物がいたとの記述もあります。この人物の出自や生涯については、いくつかの謎が残されています。

天皇の殯宮に仕えた一族

円目王は、遊部君（あそべのきみ）の祖として知られています。『喪葬令集解古記』によると、伊賀の比自支和気（ひじきわけ）一族が代々、天皇の殯宮（あらきのみや、もがりのみや）に仕えていました。しかし、雄略天皇崩御の際に、比自支和気一族が絶えたため、比自支和気の娘を妻としていた円目王がその役を継承することになったと伝えられています。

当時の天皇（清寧天皇と推測されています）は、円目王に対して「手足の毛が八束毛になるまで遊べ」と命じたとされます。これは、円目王とその子孫が、代々、天皇の喪に関連する特別な役職である遊部として仕え、課役を免除されることを意味します。

遊部君の役割と居住地

遊部君は、越中国砺波郡や大和国高市郡に居住していたとされ、現在の南砺市大字遊部や橿原市四分町などが比定地として挙げられています。また、荒城郡にも遊部郷が存在し、遊部君との関連性が指摘されています。

遊部は、天皇の崩御の際に、最も近い血縁者以外の者が殯宮に入り、2人1組で天皇に仕える役職でした。その役割は、死者の魂（凶癘魂：きょうれいのたましい）が荒ぶることを防ぐ鎮魂の儀式です。刀と矛を持つ者を禰義（ねぎ）、刀と酒食を持つ者を余比（よひ、よし）と呼び、殯宮の外では諸臣が誄（しのび）の儀礼を行いました。

『令集解』の記述によれば、遊部一族は皇別氏族に属すると考えられています。

比自岐神社と謎

三重県伊賀市比自岐には、比自岐神社が鎮座しています。祭神は比自岐神であり、比自支氏の祖神とする説があります。この神社が現在も存在していることから、比自支和気一族が完全に絶えたという記述の正確性や、円目王と妻の子孫が繁栄し、神社を奉斎した可能性など、いくつかの疑問が残されています。また、同神社には葛城国造の祖神である剣根命も合祀されています。

円目王に関する記録は断片的であり、その生涯や活動については不明な点が多いです。しかし、天皇の殯宮に仕えた一族の祖として、日本の古代史における重要な存在であったことは間違いありません。今後の研究によって、より詳細な情報が明らかになることが期待されます。

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