冒進

冒進：鉄道における危険行為

鉄道において、列車が安全が確保されていない状態で次の区間へ進むことを「冒進」といいます。これは、信号や閉塞、電源といった安全システムを無視して進行することによって発生し、正面衝突や追突といった重大な事故につながる危険な行為です。

冒進の種類

冒進にはいくつかの種類があり、それぞれ異なる状況で発生します。

1. 信号冒進

自動閉塞方式の区間では、一つの区間を一度に一列車のみが走行できます。先行列車が区間を占有している場合、後続列車は停止信号（赤信号）で停止しなければなりません。しかし、この停止信号を無視して進入することを「信号冒進」といいます。これは、正面衝突や追突事故の危険性を非常に高くします。ATSやATCなどの安全装置によって防止策が講じられていますが、運転手の不注意や疲労などが原因で発生するケースがあります。イギリスではSignal Passed at Danger (SPAD)と呼ばれ、国際的な鉄道用語として認知されています。

2. 閉塞冒進

非自動閉塞方式の区間では、タブレットや通票、スタフといった閉塞システムによって列車の運行が管理されています。決められた閉塞システムに従わずに次の区間へ進入することを「閉塞冒進」といいます。信号冒進と同様に、正面衝突や追突事故の危険性があります。

3. 異電源区間冒進

電化区間には直流区間と交流区間があり、両区間が接する箇所には送電を遮断するデッドセクションが設けられています。直流電車が交流区間、交流電車が直流区間に進入することをそれぞれ「交流冒進」「直流冒進」といいます。交直流電車では運転士がデッドセクション通過時に車両の電源を切り替える操作が必要ですが、不適切な操作や不備によって車両や変電設備に障害が発生する可能性があります。また、架線のない区間へ架線集電方式の電車が進入するケースも冒進に含まれます。パンタグラフと架線の接触による物理的な損傷、大電流による架線の溶断などが発生する可能性があります。

交流冒進試験

1961年、常磐線の取手～藤代間で行われた交流冒進試験は、歴史的な事例として知られています。この試験では、直流区間から交流区間へ電源を切り替えずに進入することで、車両や設備への影響を検証しました。試験の結果、冒進用変流器のコイルが断線し、保護回路によって変電所の遮断器が作動、列車は惰性で走行する事態となりました。この事故を受けて、冒進用変流器の改良が行われました。

まとめ

冒進は、鉄道運行における重大な危険行為であり、様々な要因によって発生します。安全な鉄道運行のためには、運転手の教育・訓練、安全装置の整備・維持、そして関係者全体の安全意識の向上などが不可欠です。この問題に対する継続的な取り組みが、安全な鉄道社会の構築に繋がります。

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