琉球国

琉球国とは

琉球国（りゅうきゅうのくに）は、かつての琉球王国の版図（現在の沖縄県）に相当する地域を指す地名です。この項目では、太平洋戦争終結以前の琉球国について解説します。

概要

琉球国という名称は、琉球王国の正式名称として、また琉球王国消滅後の過渡的な国名、さらに琉球処分後の便宜的な国名として用いられました。

琉球王国の正式名称として

「琉球國」または「琉球国」（琉球語：ルーチューククまたはドゥーチュークク）は、琉球王国の正式名称でした。琉球王国時代の文献では、「琉球國」という表記が数多く見られます。なお、「琉球王国」という名称は、近現代における歴史的な呼称です。

琉球王国消滅後の過渡的な国名として

琉球藩の廃止と沖縄県の設置後も、「琉球国」は地域を指す国名として法令上や行政上で用いられました。律令制から江戸時代末期まで、令制国は公の制度として効力を持っていましたが、廃藩置県以降は公の法令や公文書で用いられなくなりました。しかし、明治期の都道府県制や市町村制の変革期には、旧慣として国名が用いられることもありました。このような過渡的な地名としての「琉球国」も、やがて「沖縄県」という県名に取って代わられました。ただし、国土地理院が発行する地勢図では、現在でも尖閣諸島を含めて「琉球国」と表記されています。

琉球処分後の便宜的な国名として

琉球王国成立以前に創建された護国寺や波上宮は、神仏分離以降「琉球国新一宮」とされています。これは、琉球の政体とは関係なく、沖縄県設置後も便宜的に用いられている名称です。神社の統括組織である神社本庁の解釈と、政体の変更や領土の縮小、律令や法令上の令制国の扱いとは直接の関係はありません。

その他

因幡国の大名であった亀井茲矩は、天正10年（1582年）から文禄2年（1592年）以前に「琉球守」を名乗っていました。これは豊臣秀吉にも公認されており、当時の豊臣政権が琉球を日本の一部とみなしていたか、外国とみなしていたかについては研究者間で議論があります。

経緯

1869年（明治2年）に日本で版籍奉還が行われましたが、これは琉球王国に直接的な影響を与えなかったと考えられています。

1871年（明治4年）に日本の全国的な廃藩置県が行われ、薩摩藩は鹿児島県となりましたが、琉球王国の実効支配領域は廃藩置県の対象外でした。

明治維新後、琉球王国は一時的に鹿児島県の管轄となり、廃藩置県の布告には「外琉球国」という記載が見られます。

1872年（明治5年）に琉球藩が設置され、琉球の管理は鹿児島県から外務省に移管されました。この際、日本政府は琉球王国に対し「御国体、御政体永久不相替」と約束しました。

同年、大蔵大輔の井上馨が琉球の版籍を接収し国郡を設置するよう上申しましたが、これは却下されました。

日本明治政府は琉球国王の尚泰を「琉球藩王」としましたが、尚泰は清への朝貢を続けました。これにより、琉球は日本と清の両属状態となりました。

1879年（明治12年）に沖縄県が設置され、尚泰は東京へ移住、琉球王国は滅亡しました（琉球処分）。

令制国の経緯

令制国制度は、明治維新によって国司制度が廃止されたため、行政区分としては過渡的な意味合いを持つようになりました。ただし、戊辰戦争後の処分として、陸奥国と出羽国が分割されたり、北海道に新たな国が設けられたりしました。

しかし、琉球王国の実効支配領域は、律令上や法令上、令制国に組み込まれることはありませんでした。そのため、「琉球国」は令制国の一つではなく、五畿八道にも含まれません。

薩南諸島との差異

南西諸島のうち、薩南諸島（大隅諸島、トカラ列島、奄美群島）は、琉球国とは異なる経緯をたどっています。

大隅諸島

大隅諸島は、古代から多禰国、のちに大隅国に編入され、日本の領域となっています。

トカラ列島

トカラ列島は、1227年に薩摩国川辺郡となりました。一時的に日琉両属体制となったり、日和見的な勢力が現れたりしましたが、近世には薩摩藩島津氏の直轄領となりました。1897年に大隅国大島郡に再編され、1973年に鹿児島郡へ転属となり、再び薩摩国に戻った形となっています。

奄美群島

奄美群島は、琉球王国の支配下に置かれたものの、琉球侵攻後は薩摩藩の直轄領となり、琉球王国からは分離されました。ただし、名目上は琉球王国の領域とされていました。廃藩置県により鹿児島県に編入され、1879年に大隅国に編入されて正式に日本の領域となりました。

まとめ

琉球国は、琉球王国という独立国が存在した領域を指す名称であり、日本の令制国には含まれませんでした。琉球国は、琉球王国の正式名称として、またその後の過渡的な地名として用いられ、その歴史は複雑で多岐に渡ります。

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