冷水湧出帯

冷水湧出帯（れいすいゆうしゅつたい）

冷水湧出帯とは、海底で見られる特異な生態系を持つ領域です。この地域では、硫化水素やメタンを豊富に含む湧水がわき出しており、多様な生物が生息しています。冷水湧出帯は、時に塩水溜まりの形をとり、その中には独特な生物群集が形成されています。

形成と特性

冷水湧出帯は、海底での地質活動に伴い、亀裂ができた場所で形成されます。地下の石油やメタンが、地層の裂け目を通じて湧出します。これがバクテリアによる化学合成の環境を支え、それを基盤にした生態系が成立します。冷水湧出帯で形成される炭酸塩鉱物は、特にメタンと海水の反応によって生じると考えられています。

冷水湧出帯には以下のような種類があります。

• - 石油・ガス湧出帯
• - ガス湧出帯（メタン湧出帯）
• - ガスハイドレート湧出帯
• - 塩水湧出帯（塩水溜まりを形成）
• - 海底窪地
• - 泥火山

これらの場に生息する生物は、極限環境に適応した存在であり、化学合成に依存しています。バクテリアが他の生物に栄養を提供する重要な役割を果たしています。

生物相と化学合成

冷水湧出帯で生息する主な生物としては、チューブワームや貝類が顕著です。特にチューブワームは、共生細菌と組み合わさってメタンや硫化水素を利用し生命を維持しています。こうした化学合成栄養二枚貝も数多く存在しており、主にハナシガイ科やオトヒメハマグリ科、イガイ科に属します。

冷水湧出帯の初期段階では、豊富なメタンが生物の栄養源となります。また、この環境に生息する貝類の多くは、摂食行動を行わず、共生するバクテリアから栄養を得ています。この構造により、安定した生態系が築かれ、多数の固有種が進化してきました。

環境の変化と生態系の遷移

冷水湧出帯の環境は、ガスの湧出量が減少することで生態系にも影響を及ぼします。初期にはチューブワームが主流ですが、時間の経過とともに他の生物と交代していくことが観察されています。シボグリヌム科のチューブワームは、250年以上も生存することが確認されており、生物の寿命が非常に長いことでも知られています。

さらに、冷水湧出帯は、その地理的特性から多様な生物群が形成され、熱水噴出口と比較すると安定した環境と言えます。しかし、局所的な生態系は時間と共に変わることもあります。

地理的分布

冷水湧出帯は、1983年にメキシコ湾で初めて発見され、現在では大西洋や地中海、太平洋など、世界中のさまざまな地域で報告されています。日本海やモントレー湾沖でも見つかっており、また日本周辺の地域では多くの固有種が確認されています。特に、鹿児島湾の「たぎり」にはサツマハオリムシが生息しており、全国的に研究が進められています。

まとめ

冷水湧出帯は、そのユニークな特徴から注目されており、今後の研究が期待されます。多様な生態系の理解は、地球環境や生物の進化に関して新たな知見をもたらすことでしょう。

もう一度検索