処羅可汗

処羅可汗（Čula qaγan）

処羅可汗（しょらかがん、チューラー・カガン、拼音：Chùluó kèhán、? - 620年）は、7世紀初頭の東突厥の可汗です。始畢可汗（在位：609年 - 619年）の弟にあたり、兄の死後、東突厥の可汗位を継承しました。「処羅可汗」は称号であり、姓は阿史那（あしな）氏ですが、個人名は記録に残っていません。また、俟利弗設（イルテベル・シャド）は官職名です。

生涯

619年、兄である始畢可汗が亡くなると、その子の什鉢苾（しばひつ）はまだ幼かったため、東突厥の有力者たちは泥歩設（でいほ・シャド）を任じ、幽州（現在の北京一帯）の北方に住まわせました。そして、始畢可汗の弟である俟利弗設を新たな可汗として擁立し、処羅可汗としました。

即位後、処羅可汗は早速、突厥の伝統的なレビラト婚に従い、隋の皇族であった義成公主（ぎせいこうしゅ）を娶りました。また、唐朝に対して使節を派遣し、朝貢の意を示しました。これは、唐との関係を安定させ、国力を維持するための外交戦略であったと考えられます。

620年、処羅可汗は使者を派遣し、隋の煬帝（ようだい）の皇后であった蕭氏（しょうし）と、その孫である楊政道（ようせいどう：斉王楊暕（ようえん）の遺腹の子）を突厥に迎え入れました。楊政道は隋王として擁立され、突厥に逃れてきた多くの中国人たちが彼の配下に置かれました。彼らは百官を置き、定襄城（じょうじょうじょう）を居城とし、隋の再興を試みました。この動きは、唐朝との関係に微妙な影を落とすことになります。

同年7月、唐の秦王李世民（後の太宗）が劉武周（りゅうぶしゅう）を討伐しました。劉武周は突厥に逃亡しましたが、その後、馬邑（ばゆう）に帰還しようとしたため、白道（はくどう）で突厥によって殺害されました。これは、突厥が唐との関係において、一定の距離を保とうとしていたことを示唆しています。

処羅可汗は在位わずか1年余りで、620年に亡くなりました。彼の死後、義成公主はその子の奥射設（おくしゃせつ）を弱小とみなし、擁立せずに廃しました。そして、処羅可汗の弟である咄苾（とつひつ）を新たな可汗として擁立し、頡利可汗（けつりかがん）としました。これにより、東突厥の政治情勢は新たな局面を迎えることになります。

妻子

可賀敦（カガトゥン：皇后）
義成公主（ぎせいこうしゅ）

子

奥射設（おくしゃせつ）

参考資料

『旧唐書』（列伝第百四十四上）
* 『新唐書』（列伝百四十上 突厥上）

もう一度検索