出口延佳

出口延佳（でぐち のぶよし）

出口延佳は、江戸時代前期の神職であり、国学者としても活躍しました。元和元年（1615年）に伊勢の宇治山田で生まれ、元禄3年（1690年）に亡くなりました。幼名は延良、通称は与三次郎、愚太夫、信濃、号は直菴、講古堂と称しました。

生涯

延佳は、度会延伊の子として生まれました。6歳で伊勢神宮の権禰宜となり、度会姓を名乗るようになります。権禰宜として伊勢神道の興隆に尽力し、『陽復記』、『太神宮神道或問』、『神宮秘伝問答』などの著作を著しました。また、古事記の諸写本を校合し、『鼇頭古事記』を著すなど、国学者としても活躍しました。

延佳は、慶安4年（1647年）に、神宮祭主の河辺定長らとともに豊宮崎文庫を創建し、神官の子弟たちの教育にも力を入れました。門下からは山崎闇斎、山本広足、真野時縄、河辺精長など、著名な学者を輩出しました。

しかし、寛文10年（1670年）の大火で豊宮崎文庫は全焼し、多くの蔵書や校訂した図書を失ってしまいます。さらに、翌年には両宮の師職訴訟で外宮側が敗訴し、延佳は祠官一同とともに閉門処分を受けるなど、不遇の晩年を過ごしました。貞享4年（1688年）に霊元天皇の口宣により従四位上に叙せられました。

学問・思想

延佳は、中世以来の伊勢神道の教学復興に尽力しました。儒教の思想などを取り入れ、新たな解釈を加えることで、「後期伊勢神道」と呼ばれる教学を形成しました。延佳は、『陽復記』の中で、「神道とは、人々の日常生活の中にあり、すべての事が神道に通じる」と述べました。また、『太神宮神道或問』では、「神を祭る儀式は神主が行うが、神道は身分の上下に関わらず、日々の務めを全うすることである」と説いています。

このように、延佳の思想は、神道を日常生活の中に捉え、民衆一般に開放したところに特徴があります。また、儒教や仏教については、神道を基本とした上で、礼儀や徳を身につけるための補助的なものとして捉えました。

延佳の学問と思想は、後の神道研究に大きな影響を与えました。彼の著作は、神道のあり方や日本人の生き方について、深く考えさせられる内容となっています。

主な著作

『陽復記』
『太神宮神道或問』
『神宮秘伝問答』
『鼇頭古事記』

参考文献

出口延佳 - 『朝日日本歴史人物事典』
度会延佳 - 『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』
度会延佳 - 『世界大百科事典 第2版』
國學院大學日本文化研究所 編『〔縮刷版〕神道事典』
* 岡田莊司 編『日本神道史』

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