函館市交通局8000形電車

函館市交通局8000形電車は、1990年に登場した函館市交通局（現在の函館市企業局交通部、通称：函館市電）の路面電車車両です。長年にわたり函館市電の主力として活躍しています。

概要

1990年3月、老朽化した800形電車の車体を更新する形で8000形が登場しました。1997年までに8両が導入され、函館市電の輸送を支えました。その後、2002年からは後継となる8100形への更新が進められましたが、8100形の増備計画が中断されたため、2012年より再び8000形の増備が再開され、2両が追加導入されました。

2016年からは、既存車両に対する大規模改修が実施されています。この改修では、ヘッドライトや行先表示器のLED化などが行われ、安全性の向上と省エネルギー化が図られています。

車体

8000形は、車体更新時に様々な改良が加えられています。降車扉は、従来の引戸から折戸に変更され、ステップも3段化されることで乗降性が大幅に改善されました。また、落ち葉や積雪による滑走を防ぐため、函館市電の車両として初めて砂撒き装置が搭載されました。前面は大きな1枚窓を採用し、側面は上段下降・下段上昇式の2段窓となっています。

初期に製造された8001 - 8003号車は、プロトタイプ的な要素があり、8004 - 8008号車とは側面の行先表示器の有無や形状、警笛の種類、行先表示の内容などに細かな違いが見られます。2010年代には、8002 - 8008号車の側面行先表示器にカバーが取り付けられ、長期間使用されない時期がありました。

15年ぶりに更新された8009・8010号車は、前尾灯が角型から丸型に変更され、前面と側面の行先表示器が方向幕からLED式に変更されるなど、外観が大きく変化しました。

製造

8000形は全車、アルナ工機（現アルナ車両、8009から）によって、種車となる800形の車体更新により製造されました。各車両の製造年月と種車は以下の通りです。

8001 - 1990年3月、旧803
8002 - 1990年12月、旧808
8003 - 1992年2月、旧804
8004 - 1993年1月、旧801
8005 - 1994年3月、旧802
8006 - 1995年3月、旧805
8007 - 1997年3月、旧806
8008 - 1997年3月、旧809
8009 - 2012年3月、旧810
8010 - 2012年12月、旧811

当初、「函館市交通事業経営計画（第2次）」では、2016年度までに車体更新車を3両導入する予定でしたが、実際には2両の導入に留まりました。そのため、種車となった800形のうち1両は、現在も現役で運行を続けています。函館市交通部（当時）は、2016年時点で、函館市電に残るレトロな車両を各形式1両ずつ、可能な限り保存したいという意向を示していました。

大規模改修

1990年代に導入された8両は、車体の老朽化が進行していたため、大規模な改修工事が行われることになりました。

改修は札幌交通機械が担当し、2019年まではJR北海道五稜郭車両所内の工場で実施されていましたが、2020年以降は五稜郭車両所の廃止に伴い、札幌の工場で改修が行われています。

各車両の改修時期は以下の通りです。

8001 - 2016年9月～2017年4月
8002 - 2018年3月
8003 - 2018年9月～2019年3月26日
8004 - 2019年9月
8005 - 2022年10月～2023年3月14日
8006 - 2020年9月
8007 - 2023年6月6日～2024年3月
8008 - 2021年3月

改修工事では、行先表示器やヘッドライトのLED化、床下腐食部分の補修、握り棒の増設、配管や配線の更新などが行われました。前面行先表示器は、系統表示部分がカラーで表示できるタイプが採用され、行先の多言語表示や、駆け込み乗車をしないよう注意喚起する表示も行われるようになりました。また、側面行先表示器のLED化（8001は新規設置）も実施されています。

塗装

標準塗装

2004年時点では、8000形の全車両が広告塗装となっており、標準塗装の車両は存在しませんでした。2012年に8009号車が導入された際は、前面のみ標準塗装、側面は白一色という姿で登場しました。2020年時点では、再びすべての車両が広告塗装となっていますが、車体側面のみに広告が施される部分ラッピング広告車両の前面は、白地に緑色の標準塗装となっています。2022年には、当時未改修だった8005号車が、車体改修までの間、前面・側面ともに標準塗装で運行されました。

近年では、大規模改修の前後などに広告塗装を剥がし、一時的に前面・側面ともに白色の状態で運用されることがあります。

広告塗装

8000形の全車両には、企業などの全面広告が施されています。一時期、全面ラッピング広告の対象から外れ、部分ラッピング広告の車両が見られた時期がありましたが、現在は再び全面広告となっています。以下に、2023年9月時点での各車両の広告主を示します。

8001 - 函館カールレイモン
8002 - 函館米穀
8003 - 道南うみ街信用金庫
8004 - 不動産企画ウィル
8005 - (株)日商興産
8006 - (株)ジャックス
8007 - MS保険サービス北海道
8008 - (株)ニューメディア函館センター
8009 - (株)いちたかガスワン
8010 - (株)布目

その他

2013年1月11日から営業運転を開始した8010号車は、同年2月10日までの期間限定で、鉄道むすめの「松風かれん全国巡り仕様ラッピング」として運行され、人気を集めました。

事故

8002 - 2022年12月16日1時頃、谷地頭停留場発湯の川停留場行きとして運行中に、若松町付近の市役所前停留場 - 函館駅前停留場間で脱線。
8005 - 1999年 1月2日15時頃、青柳町停留場から谷地頭停留場への下り坂にて滑走し、止まりきれず待合室へ衝突。
8007
2002年 9月8日17時5分頃、谷地頭停留場発湯の川停留場行きとして運行中に、十字街停留場付近で脱線。
2023年5月6日10時ごろ、函館どつく前停留場発湯の川停留場行きで運行中、函館どつく前停留場を出て約10メートルの地点の分岐器が正しく作動せず脱線。
8008 - 2023年10月6日7時ごろ、函館駅前停留場 - 松風町停留場間の松風町方面に走行中、強風の影響とみられる架線断線に巻き込まれる。

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