刈

刈（かり・苅）について

「刈」とは、古代から中世にかけて用いられた、田の面積を表す単位の一つです。束刈（そくかり）や束把刈（そくはかり）とも呼ばれ、稲を束ねた量を基準に、その収穫量が得られる面積を「1刈」としました。しばしば「把（わ）」と組み合わせて用いられました。

歴史

古代

大化の改新以前から、東北地方や北陸地方を中心に、「代（しろ）」という単位と併用されていました。「代」も刈と同様に面積を表す単位ですが、刈が稲の収穫量に基づいているのに対し、「代」はより具体的な面積を指す傾向がありました。律令制が導入されると、公式には町反歩制が用いられるようになり、刈は公的な単位としては使われなくなりました。しかし、民間の間では慣習として残り続けました。

中世

鎌倉時代に入り、律令制が形骸化すると、刈は再び広く用いられるようになりました。東北・北陸地方だけでなく、畿内などの地域でも、土地の売買文書に刈を単位としたものが現れるようになりました。戦国時代には、知行地の表示に貫高制と併用して刈高制を採用する地域もありました。例えば、越後上杉氏では、100刈を1反とみなし、検地や徴税に用いました。このように、中世において刈は、土地の価値を測る重要な指標として機能しました。

近世

江戸時代に入り、石高制が導入されると、刈は再び公的な単位としては使われなくなりました。しかし、地域によっては、6把を1束として収穫できる土地を1刈と数える「刈詰（かりつめ）」という慣習が残りました。これは、刈が単なる面積の単位ではなく、収穫量と密接に結びついていたことを示しています。

刈の基準と換算

刈の基本的な考え方は、把の整数倍が刈に相当するというものでした。しかし、その換算は地域によって異なり、6把を1刈とする場合もあれば、10把を1刈とする場合もありました。また、把そのものが稲刈りの際に両手の親指と中指でつかむことができる稲の量という、不安定な基準に基づいていたため、同じ1刈でも時代や地域によって実際の面積には差がありました。そのため、1反に換算する際も、300刈、350刈、600刈など、地域によってまちまちでしたが、室町時代以降にはほとんどの地域で1反＝100刈とされました。

まとめ

刈は、稲の収穫量に基づいた面積の単位として、日本の歴史の中で重要な役割を果たしました。時代や地域によってその基準や換算が異なる複雑さを持つものの、人々の生活や土地への関わりを反映する興味深い単位であったと言えるでしょう。


参考文献
水野柳太郎「束把刈」『国史大辞典 8』（吉川弘文館 1987年）
歌川学「刈」『日本史大事典 2』（平凡社 1993年）
* 池亨「束刈」『日本歴史大事典 2』（小学館 2000年）

もう一度検索