把

把（は/わ）

概要

把（は/わ）は、古代日本において用いられた穎稲（えいとう、収穫前の籾がついた稲穂）の計量単位です。10把で1束（たば）となり、この束を基本として様々な量が定められていました。元々は、文字通り片手で握ることができる程度の稲の量を指す、目分量の単位でした。

歴史と変遷

中国の度量衡が採用される以前は、両手の親指と中指で掴める程度の穎稲を「1把」と数えていました。この「把」という字が持つ「手で握る」という意味が、そのまま単位の由来となっています。しかし、時代が下るにつれて、計量単位としての「把」は、単なる目分量ではなく、より具体的に規定されるようになります。

1束の稲を脱穀して籾米にした場合、1斗（約18リットル）となり、精米すると5升（約9リットル）になりました。したがって、1把は籾米にすると1升（約1.8リットル）、精米にすると5合（約0.9リットル）に相当します。ただし、この時代の1升は、現代の枡で換算すると約0.4升に相当することに注意が必要です。

また、「把」は単に稲の量を測る単位としてだけではなく、土地の面積を表す単位としても用いられるようになりました。10把で1刈（かり）となり、これは1人が1日に刈り取れる稲の量を基準とした面積を表しています。

田租との関連

古代の律令制度においては、田租（でんそ、税としての米）の徴収において「把」が重要な役割を果たしました。田令（でんりょう、律令の田に関する規定）によると、当初は1段（たん、約992平方メートル）あたり2束2把の穎稲を税として納めることになっていました。しかし、慶雲3年（706年）には税制が見直され、1段あたり1束5把に改められました。この変化は、当時の社会情勢や稲作技術の変化を反映したものと考えられています。

まとめ

「把」は、古代日本の稲作文化と密接に結びついた計量単位であり、当初は目分量であったものが、次第に具体的な量や面積を表す単位として確立していきました。また、田租の徴収という国家の根幹に関わる部分にも用いられた、非常に重要な単位であったと言えるでしょう。

参考文献

徳永健太郎「把（わ）」『日本荘園史大辞典』（吉川弘文館 2003年） ISBN 978-4-642-01338-3
相曽貴志「把（は）」『日本歴史大事典 3』（小学館 2001年） ISBN 978-4-095-23003-0

関連項目

単位の換算一覧
面積の比較

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