別府大仏

別府大仏（べっぷだいぶつ）

別府大仏は、かつて大分県別府市天満町7に建立されていた、非常にユニークな大仏でした。昭和初期に造立され、一時は別府の新たな名所として多くの人々に親しまれましたが、平成元年（1989年）に解体されたため、現在はその姿を直接見ることはできません。

像の特徴と構造

この大仏は、像高24メートルにも及ぶ鉄筋コンクリート造りの阿弥陀如来像でした。特に注目すべきは、その建造に際し、一般から集められた多くの遺骨や遺髪がコンクリートに混ぜ込まれていた点です。これは『骨仏（こつぶつ）』と呼ばれる非常に珍しい造りの大仏で、供養の願いが込められていました。

大仏が座す蓮華座の内部は、他に類を見ない三層構造となっていました。1階部分には、仏教的な体験ができる戒壇巡りや、集会などが催せる大ホールが設けられていました。2階には、西国三十三観音霊場や四国八十八箇所霊場といった、日本各地の著名な霊場を巡拝したのと同じ功徳が得られるよう、それらの写しが安置されていました。そして3階部分には、不動明王、薬師如来、大日如来、双子権現、文殊菩薩、善光寺菩薩など、計6体の仏像が祀られており、大仏の胎内でありながらも一つの信仰空間として成り立っていました。

建立の経緯と歴史

別府大仏の建立は、大分県を拠点に活躍した実業家、岡本榮三郎氏の発願によるものでした。岡本氏は後に仏門に入り、榮信（えいしん）と名乗るようになります。榮信師は、大正14年（1925年）にこの壮大な大仏建立計画を発表しました。そして、昭和3年（1928年）には無事に落慶法要が執り行われました。

榮信師は、大阪天王寺にある一心寺の骨仏に深く感銘を受けており、これが別府大仏を骨仏として造立する強い動機となりました。実際に、一般から広く遺骨や遺髪を募り、それをコンクリートに混ぜ込むという特異な手法が採用されたのです。この特異な大仏の制作を手掛けたのは、文化功労者であった山崎朝雲の高弟、入江爲義氏でした。榮信師は、この大仏を本尊として榮信寺を開山し、自らその住職を務めました。

かつての賑わいと衰退

別府大仏は、落慶を迎えた昭和3年（1928年）に運行が始まった地獄めぐり遊覧バスと並び、瞬く間に別府の新たな名物となりました。榮信寺には多くの参詣者が訪れ、大変な賑わいを見せました。当時の観光絵葉書などには「東洋一を誇る大佛」と記されており、その存在感の大きさがうかがえます。

しかし、屋外に建立されていたためか、時を経るにつれて鉄筋コンクリートの風化が著しく進行しました。昭和40年代には、安全上の問題から大仏内部の拝観が停止されることとなりました。やがて全体の老朽化が進み、修復も困難となったため、惜しまれつつも平成元年（1989年）に解体されることが決定し、実行されました。

現在の状況

現在、別府大仏の跡地は別の寺院の墓地となっています。かつて大仏が立っていた場所には、お堂が建てられ、その中に大仏の約10分の1スケールにあたる原型仏が静かに祀られています。栄華を誇った大仏の面影は、この原型仏と、別府の歴史を知る人々の記憶の中に留まるのみとなっています。

（参考：珍寺大道場 外部リンクなど）

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