利神社 (掛川市)

利神社：歴史と伝統を紡ぐ掛川市の鎮守

静岡県掛川市下俣南に鎮座する利神社は、悠久の歴史を刻む神社です。古代の社格制度においては式内小社に、近代においては郷社に列せられており、その由緒の深さを感じさせます。

祀られる神々

利神社では、大歳神と宇加之御魂神の二柱の神々が祀られています。大歳神は歳神様として、五穀豊穣や家内安全の神として信仰を集め、宇加之御魂神は、皇室の祖先神として尊崇されています。

創建と歴史

創建時期は定かではありませんが、927年（延長5年）に編纂された『延喜式』神名帳に「利神社」として記載されていることから、それ以前の創建と推測されます。『延喜式』は平安時代の法典であり、その中に記された神社は「式内社」と呼ばれ、特別な格式を有していました。

江戸時代には掛川藩の庇護を受け、佐野郡掛川宿の西部を守護する神社として、地域住民から厚い信仰を集めました。1743年（寛保3年）には、当時の藩主世嗣である小笠原長恭が参拝し、貴重な品々を奉納した記録も残されています。1644年（寛文4年）には本社が再建されたという記録もあり、時代と共に変化しながらも、人々の信仰の拠り所として大切に受け継がれてきたことが伺えます。

明治維新後には郷社に列せられ、1915年（大正4年）には建物の再建、1926年（大正15年）には神楽殿の再建が行われています。これらの歴史的変遷は、神社が時代に合わせて変化し、維持されてきた証です。

式内社としての考証

利神社は、延喜式神名帳に記載された式内社と比定されていますが、その正確な位置については、古くから様々な議論がありました。江戸時代の国学者である伴信友や鈴鹿連胤も『神名帳考証』や『神社覈録』において、利神社の所在について考察し、それぞれ独自の説を提示しています。明治時代の『特選神名牒』では、利神社の所在地を現在の掛川市下俣に特定しています。これらの研究は、歴史研究の積み重ねと、様々な視点からの考察が必要であることを示しています。

境内と祭事

利神社の境内には、杮葺流造の本殿を覆う弊殿付きの拝殿、神楽殿、そして静寂な利神池があります。境内には利神公園も隣接し、地域住民の憩いの場にもなっています。

祭事としては、祇園祭と秋祭りが知られています。かつてはそれぞれ6月15日と9月14日に執り行われていましたが、1920年（大正9年）からは10月に合同で執り行われるようになりました。

また、利神社は龍尾神社、神明宮、池辺神社、白山神社、津島神社、貴船神社と共に、7社合同で行われる掛川祭の中核を担っています。この掛川祭は、江戸時代中期から続く歴史ある祭で、複数の神社が合同で祭礼を行うという全国的にも珍しい事例として知られています。当時、掛川宿は掛川城の総曲輪の内側に位置し、侍町と宿場町が一体化していたことから、複数の神社が合同で祭礼を行うという独特の文化が生まれたと考えられます。

氏子区域

利神社の氏子区域は、掛川市の以下の地区となっています。

静岡県掛川市下俣町区
静岡県掛川市中央二丁目区
静岡県掛川市十九首区
静岡県掛川市小鷹町区
静岡県掛川市中央三丁目区
静岡県掛川市中央高町区

年表

1644年：本社再建
1915年：建物再建
* 1926年：神楽殿再建

利神社は、歴史と伝統を刻み続ける掛川市の重要な神社であり、これからも地域の人々の信仰の拠り所として、その役割を果たし続けることでしょう。

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