神社覈録

『神社覈録』は、江戸時代後期の国学者である鈴鹿連胤によって著された、全75巻に及ぶ神社考証の書です。この書は、式内社を始めとする古社について、その由緒や祭神、鎮座地などを詳細に考証したもので、日本の古代史や神道研究において重要な資料となっています。

概要

『神社覈録』は、式内社や国史見在社、その他著名な神社を対象に、六国史を始めとする様々な文献から、各神社に関する記述を引用しながら、社名の訓み、祭神、鎮座地などを考証しています。その内容は、単なる神社の記録にとどまらず、古代の歴史や文化、信仰体系を深く理解するための手がかりを提供しています。ただし、当時の状況から、引用文献の中には偽書とされるものも含まれている点には注意が必要です。また、後日改めて検討するため、空欄のまま残されている箇所も存在します。しかし、『国内神名帳』の全文を参考として掲載するなど、当時の神社研究における第一級の資料として高く評価されており、類書の中でも最も詳細かつ信頼性の高いものとされています。

沿革

『神社覈録』は、天保7年（1836年）に起稿され、明治3年（1870年）に完成しました。明治維新後、神祇官から献上の内命が下されたため、鈴鹿連胤は稿本に補訂を施し、清書本と控本を作成しました。清書本は、明治3年11月22日に宮内庁に上呈されましたが、連胤自身は、その2日前に死去しています。この清書本は、現在も宮内庁書陵部に所蔵されています。

明治35年（1902年）には、皇典講究所の講師であった井上頼圀と佐伯有義によって、鈴鹿家所蔵の矢野玄道による校正本を底本に、句読点と訓点が施され、洋綴2巻本として皇典講究所から刊行されました。これにより、『神社覈録』は広く一般の研究者や関心を持つ人々に利用されることとなりました。

参考文献

『神社覈録（復刻版）』、思文閣出版、1971年 ISBN 4-901339-06-0（初版は皇典講究所、1902年）
『神道大辞典 縮刷版』、臨川書店、1969年 ISBN 4-653-01347-0（初版は平凡社、1939年）
* 『神道史大辞典』、吉川弘文館、2004年 ISBN 4-642-01340-7

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