前田山英五郎

前田山英五郎について

前田山英五郎（まえだやま えいごろう、1914年5月4日 - 1971年8月17日）は、愛媛県八幡浜市出身の大相撲力士であり、第39代横綱に昇進した人物です。本名は萩森金松（はぎもり かねまつ）で、彼のキャリアは波乱に満ちていました。

若き日の前田山

前田山は喜須木尋常高等小学校を卒業後の1928年、当時の高砂部屋の親方に目をつけられ、相撲の道に進むことを決心しました。最初は相撲に対してあまり興味を持っていなかった彼ですが、兄の勧めで上京し、高砂部屋に入門します。入門当初の四股名は「喜木山」で、その後「佐田岬」に改名しましたが、最終的に「前田山」を名乗るようになります。

粗暴な性格で知られていた彼は、昇進の際には周囲から贈られる化粧廻しもなく、厳しい立場に直面しました。若い頃は度重なる酒による騒動や脱走が問題視され、高砂親方から何度も破門を言い渡されることもありました。その度に周囲の力士や恩師が彼を戻すために奔走したと言います。

病との闘い

1934年、稽古中に右腕を負傷した前田山は、悪性の骨髄炎にかかり、切断の危機に直面しました。しかし、数度の手術の後に奇跡的に回復し、その恩義を感じて四股名を「前田山」に改めました。彼の復帰後は順調に成績を伸ばし、1937年に新入幕、翌年には小結で素晴らしい成績を収めます。

横綱への道

彼は9年間にわたる大関時代を経て、1947年6月の場所では初めての優勝決定戦に進出。しかし、この時は決勝で羽黒山に敗れ、優勝同点にとどまりました。それでも、彼の横綱昇進は決定的になります。実際、1948年には横綱に昇進し、その後も名声を博しました。

不名誉な引退

しかし、横綱昇進後の彼は思わぬ苦境に立たされました。休場が相次ぎ、1950年には「シールズ事件」と呼ばれる不祥事が発生。この事件により、急遽現役引退という形で幕を下ろすこととなります。特に、この事件は彼の性格を反映したものであり、「クビになった横綱」として周囲から嘲笑されたことが影を落としました。見込みをかけられつつも、結局は弟子育成へと舵を切る運命にあるのです。

引退後の功績

引退後は高砂部屋の親方として弟子の育成に注力し、特にアメリカでの相撲普及にも尽力しました。1951年にはアメリカ合衆国を巡業し、国際的な相撲の全盛期を支えました。また、実績を残した多くの弟子たちを育て上げ、特に高見山大五郎は外国人力士として初の関取となります。彼の育成能力により、高砂部屋は幕内最多の力士を輩出することとなりました。

前田山の遺産

1971年に肝臓がんで亡くなった前田山は、57年の生涯を終えました。彼の墓所は横浜市の總持寺にあり、愛弟子の高見山が平幕優勝を果たした際には、前田山が見守っていたとも言われています。彼の人生は、力士としての闘志と親方としての指導力を併せ持つ重責を全うした道のりでした。困難を克服し、弟子たちを育成し続けた彼の姿は、相撲界における重要な存在として記憶されています。

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