劉季箎

劉季篪（りゅう きち）

劉季篪（1364年 - 1424年）は、明代に活躍した官僚です。字（あざな）を季篪といい、本貫は紹興府余姚県です。彼はその公正な人柄と民を思う姿勢で知られ、様々な功績を残しました。

生涯

1394年、劉季篪は進士に及第し、官僚としてのキャリアをスタートさせました。最初に任じられたのは行人という役職で、朝鮮への使者として派遣された際には、贈り物を一切受け取らなかったという逸話が残っています。この清廉潔白な態度は洪武帝の耳にも入り、彼は衣服と宝鈔を賜り、陝西左参政に抜擢されました。

1400年には刑部左侍郎として召し出され、中央での勤務を経験します。1404年、明朝の一大事業である『永楽大典』の編纂が始まると、姚広孝や解縉らと共に編纂官に任命され、この巨大なプロジェクトに貢献しました。

しかし、1410年には刑事判断の遅れを理由に罪に問われ、獄に下されるという不運に見舞われます。その後、両淮都転運塩司副使に左遷されましたが、赴任を躊躇したため再び獄につながれてしまいます。長い時を経て釈放された後、儒服を着て翰林院に所属し、再び編纂作業に携わることになりました。1417年には工部営繕主事に任命され、1424年にその職務中に亡くなりました。享年は61歳でした。

人物と逸話

劉季篪は、その職務において民衆の苦しみを理解し、救済に尽力した人物として知られています。

陝西での税制改革: 陝西に赴任した際、脱税事件が多発し、役人の厳しい取り締まりによって民衆が物資を運搬することすら困難になっていました。劉季篪は、部下を各地に派遣し、逮捕されていた人々を釈放し、刑罰を緩和しました。この措置によって、民衆は安心して生活を送れるようになりました。

硇砂の納入廃止: 陝西では産出しない硇砂が毎年のように納入を義務付けられていました。劉季篪は、朝廷にこれを進言し、この不当な義務を廃止させました。

洪水の対応: 洪渠で洪水が発生した際、劉季篪は堰の分水を行い、被害を最小限に抑えました。

冤罪の解消: 劉季篪は、数多くの冤罪事件を解決しました。以下にその一部を紹介します。
盗人の濡れ衣を着せられた人物を、死亡した盗人の妻子による識別で無罪放免にしました。彼は事件の真相を慎重に調査し、真実を明らかにしたのです。
汚職官吏として無実の罪に服していた1000人以上の人々を弁別し、釈放しました。
殺人の容疑をかけられた朱氏の事件では、怨恨がないことを見抜き、刑を緩めた結果、真犯人を逮捕することができました。この事件では、先入観にとらわれず、冷静に状況を分析する彼の優れた洞察力が示されています。
揚州府で発生した殺人事件では、隣人の蘇氏が犯人と疑われ拷問を受けましたが、劉季篪は証拠の刀を独自に調査し、真犯人である盗人を検挙しました。彼は、表面的な証拠だけでなく、事件の背後にある真実を追求する姿勢を貫いたのです。

これらの逸話からも、劉季篪が単なる官僚ではなく、民衆の苦しみを理解し、救済に尽力した人物であったことが伺えます。彼の公正さと知恵、そして民への深い愛情は、後世に語り継がれるべきです。

参考文献

『明史』巻150 列伝第38
故工部営繕司主事劉君墓誌銘（楊士奇『東里文集』巻20所収）

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