永楽大典

『永楽大典』（えいらくたいてん）は、明朝の永楽帝の時代に編纂された、中国史上最大級の規模を誇る類書です。その規模は、22,877巻、目録60巻、そして11,095冊にも及びます。1408年（永楽6年）に完成しました。

編纂の経緯

当初、1404年に完成した際には『文献大成』という名前が永楽帝から与えられました。しかし、内容に不備が見つかったため、編纂し直されることになりました。その後、永楽帝自らが序文を書き加え、『永楽大典』という新たな書名が与えられました。

1562年（嘉靖41年）には副本が作成され、隆慶年間（1567年 - 1572年）の初めに完成しました。この副本は、北京の皇城内に保管されました。

散逸の歴史

完成後、『永楽大典』は幾度となく火災や盗難に見舞われました。原本は明朝末期の混乱の中で焼失したとも伝えられていますが、正確なことは分かっていません。副本のみが清朝に引き継がれ、1772年（乾隆38年）には翰林院に収蔵され、乾隆帝の命による『四庫全書』の編纂に活用されました。しかし、この時点ですでに2,422巻が失われたり、不完全な状態になっていたりしていました。

その後も、アロー号事件や義和団の乱、盗難などによって、その大部分が失われてしまいました。アロー号事件の際には、北京に侵入した英仏軍が『永楽大典』を雨でぬかるんだ道に敷き詰めたという逸話も残っています。また、文廷式という人物が100冊以上を盗み、自宅に隠し持っていたという記録もあります。

現存する『永楽大典』

現在確認されているのはごく一部で、北京の中国国家図書館に162冊、台湾の国立故宮博物院に62冊、アメリカ議会図書館に41冊、日本の東洋文庫に34冊などが、世界各地に分散して所蔵されています。世界中に散らばった零本を集めると、およそ400冊前後になると推定されており、中華書局から影印版が出版されていますが、それでも全体の数パーセントに過ぎません。日本国内でも、静嘉堂文庫や天理大学附属天理図書館などが零本を所蔵しています。

内容の特徴

『永楽大典』は、経・史・子・集の四部から構成され、天文、地理、陰陽、医学、僧侶や道教、そして様々な技芸に関するものまで、あらゆる分野の図書を原本に基づいて収集しています。これらの情報は、『洪武正韻』という韻書の韻の順序に従って分類・配列されており、検索の便が図られています。ただし、短期間で完成させたため、内容には粗雑な部分も見受けられます。

失われた文献の宝庫

『永楽大典』には、後世に散逸してしまった貴重な文献も数多く含まれています。例えば、現行の『旧五代史』、『宋会要輯稿』、『経世大典站赤門』などは、清朝になってから本書の中から収集され、再構成されたものです。同様の書籍は、経部に66種、史部に41種、子部に103種、集部に175種、合計で4,926巻にも及ぶと言われています。

『永楽大典』は、中国の文化史上、非常に重要な位置を占める書物であり、失われた知識を現代に伝える貴重な手がかりとなっています。

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