劉斌 (元)

劉斌（りゅうひん）：金朝末期からモンゴル帝国初期にかけて活躍した武将

劉斌（1198年 - 1259年）は、金朝末期からモンゴル帝国初期にかけて活躍した人物です。済南府歴城県（現在の山東省済南市歴城区）の出身で、その勇敢さと戦略眼で知られています。

生涯

幼い頃に父を亡くし、祖父に育てられました。金朝末期の社会が混乱する中で、張栄という人物が済南を拠点に軍閥を築くと、劉斌はこれに従い、その才能を発揮し始めます。劉斌は管軍千戸という地位を与えられ、軍事的なキャリアをスタートさせました。

1232年（壬辰）に劉斌は河南方面に進出し、数々の功績を挙げます。その功績が認められ、中翼都統という重要な地位を授けられました。特に睢陽軍を攻めた際には、自ら部隊を率いて夜襲を敢行し、敵将を捕虜にするという大きな戦果を挙げました。この功績により、張栄はアジュルに対して「太康平定の功労者は劉斌である」と語ったと伝えられています。

その後、劉斌は襄陽に駐屯することになりますが、食糧不足に悩まされました。そこで、青陵から食糧を奪う計画を立てます。配下の者たちは、大沢に守られている青陵を攻めるのは困難だと反対しましたが、劉斌は「大沢に守られているからこそ、敵は油断しているのだ」と反論し、わずか百騎を率いて夜襲を実行しました。沢の中を50里余り進み、敵兵と遭遇すると馬を捨てて突撃し、見事に敵軍を打ち破り、食糧を奪取することに成功しました。この大胆な作戦は、劉斌の勇猛さと優れた判断力を示すエピソードとして知られています。また、六安攻めにも参加し、その際にも功績を残しています。

1243年（癸卯）には、済南推官という官職に任命され、地方行政にも携わることになります。1251年（辛亥）には、本道左副元帥という軍事的な地位に就きました。1255年（乙卯）には、済南新旧軍万戸となり、邳州に移ります。この頃には、南宋の将からも恐れられる存在になっていたようです。

1259年（己未）、劉斌は病に倒れ、息子たちに遺言を伝え終わると、62歳でこの世を去りました。彼の息子の一人である劉思敬もまた、後に歴史に名を残す人物となります。

人物評価

劉斌は、金朝末期からモンゴル帝国初期にかけての激動の時代を生き抜き、数々の戦功を挙げた人物です。その勇敢さと知略、そして困難な状況を打開する能力は、周囲から高く評価されていました。また、 административ的な手腕も持ち合わせており、地方行政にも貢献しました。南宋との戦いでは、その名を知られた存在であり、敵からも恐れられる存在であったことが伺えます。

参考文献

愛宕松男『東洋史学論集　4巻』三一書房、1988年
『元史』巻152列伝39劉斌伝

もう一度検索