劉縯

劉縯（りゅう えん）：後漢建国の礎を築いた悲劇の英雄

劉縯（りゅう えん、生年不詳 - 23年）は、後漢の初代皇帝である光武帝（劉秀）の兄であり、新代末期の動乱期に漢王朝復興を目指して立ち上がった武将です。字は伯升（はくしょう）。

生涯

若き日の研鑽

劉縯は、南頓県令の劉欽の長男として生まれました。若い頃には、一族の劉嘉と共に長安に遊学し、『尚書』や『春秋』を学んでいます。この頃から、彼は漢王朝の復興という大志を抱いていたと考えられます。

舂陵での挙兵

新代末期、各地で反新勢力が台頭する中、劉縯は荊州で漢王朝復興を目指す舂陵軍の頭領として、反新の兵を挙げました。地皇3年（22年）10月、鄧晨を新野で、弟の劉秀や李通・李軼を宛で挙兵させ、自身は舂陵で7～8千の軍勢を率いて挙兵し、所属部隊を「柱天都部」と名付けました。

劉縯は、卓越した交渉術を駆使して、緑林軍系の新市軍や平林軍といった他の反新勢力との連携を深め、連合軍を結成しました。連合軍は宛へ向けて進軍し、緒戦では勝利を収めたものの、小長安聚の戦いでは新軍に敗北し、姉や弟を含む多くの親族を失うという痛手を負いました。

しかし、劉縯は諦めませんでした。下江軍を味方に引き入れ勢力を盛り返すと、翌年には甄阜・梁丘賜率いる新軍に反撃を開始し、黄淳水の戦いで大勝利を収めました。この勝利によって劉縯の名声は高まり、王莽は彼の首に懸賞金をかけました。

更始政権の成立と劉縯の暗殺

連合軍内では、劉縯と劉玄のどちらを皇帝に擁立するかが議論されましたが、劉縯は分裂を避けるために劉玄にその地位を譲りました。こうして劉玄が更始帝として即位し、劉縯は大司徒に任命されました。

しかし、劉縯の名声が高まるにつれて、更始政権内部では彼を警戒する動きが強まりました。日ごろから更始帝に不満を抱いていた劉縯配下の劉稷が処刑されそうになった際、劉縯はこれを止めようとしましたが、逆に朱鮪や李軼の讒言により、劉稷と共に誅殺されてしまったのです。

死後

劉縯の死後、弟の劉秀が後漢を建国すると、劉縯は斉武王として追贈されました。また、劉縯の次男である劉興の末裔は、蜀漢を建国した劉備であると伝えられています。

人物像

劉縯は、剛毅な性格で、常に悲憤慷慨し、大義名分を重んじる人物でした。彼は私財をなげうってでも多くの英雄豪傑と交流し、義侠心に厚く門客を養いました。また、敵将であってもその才能を認めれば寛容な態度で接するなど、度量の大きさも持ち合わせていました。

しかし、自信家で人の意見を聞き入れない一面もあり、それが悲劇的な最期を招いた一因とも言えるでしょう。彼の剛毅な性格は、民衆からの人望にも影響を与えたようで、挙兵の際には民衆が逃げ惑う一方で、劉秀が来た際には安心したという逸話も残っています。

まとめ

劉縯は、後漢建国の礎を築いた英雄でありながら、その剛毅な性格が災いし、志半ばで非業の死を遂げた悲劇の武将です。彼の生涯は、後漢建国史における重要な転換期を象徴しており、その功績は後世に語り継がれています。

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