劉英 (前趙)

劉英（りゅう えい）

劉英は、前趙の昭武帝、劉聡の貴嬪（側室）であり、後に皇后を追贈され、武徳皇后と諡されました。彼女の生涯は、西晋末から前趙にかけての激動の時代を背景に、美貌と才知をもって宮廷に影響を与えた女性として語られます。

生涯

劉英の父は、漢（前趙）の太保であった劉殷であり、彼女は武宣皇后劉娥の姉にあたります。劉英は、その美しさで広く知られており、また、政治にも通じていたと伝えられています。

312年1月、呼延皇后が亡くなると、劉聡は新たな妃として劉英と劉娥、そして劉殷の孫娘たちを後宮に迎えようとしました。しかし、同姓であることから、劉聡の弟である劉乂が兄を強く諫めました。劉聡は、この件を太宰劉延年と太傅劉景に相談したところ、彼らは「劉殷は周王室の末裔であり、陛下の家系とは異なるため問題ない」と答えました。劉聡はこれを喜び、劉英と劉娥を貴嬪とし、昭儀よりも上位に置きました。さらに、劉殷の孫娘4人を貴人とし、貴嬪に次ぐ位を与えました。

劉聡は、この6人の劉氏を非常に寵愛し、政務を顧みることが少なくなりました。国の政治は全て中黄門を通して上奏され、左貴嬪となった劉英がこれを認可するようになりました。劉英は政治的な才能を発揮し、国政に深く関与しました。

同年6月、劉聡は劉英を皇后に立てようとしましたが、張皇太后が張徽光を皇后にすることを望んだため、劉聡はやむを得ずこれに従いました。しかし、間もなく劉英は亡くなりました。彼女の死は、宮廷に大きな衝撃を与えたと考えられます。

313年3月、張皇太后が崩御し、その2日後には張徽光も急死しました。同月、劉聡は劉英の妹である劉娥を皇后に立て、劉英にも皇后を追封し、「武徳」と諡しました。妹が皇后になったことで、劉英の功績が認められた形となりました。

劉英は、その美貌と政治的な才能で劉聡の寵愛を受け、前趙の宮廷において重要な役割を果たしました。彼女の短い生涯は、激動の時代における女性の生き方を示す一例として、歴史に名を残しています。

伝記資料

『晋書』劉聡載記
『晋書』列女伝
* 『資治通鑑』

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