加藤泰恒

加藤泰恒

加藤泰恒（かとう やすつね）は、江戸時代前期から中期にかけての大名であり、伊予国大洲藩の3代藩主を務めました。官位は従五位下・遠江守。

生涯

泰恒は、2代藩主・加藤泰義の次男として生まれました。初名は泰経、泰常。秉軒と号しました。

父の早世により世子となり、延宝2年（1674年）に祖父の隠居によって家督を相続し、大洲藩3代藩主となりました。藩主となると、度重なる公役によって悪化した藩財政に対処するため、天和元年（1681年）には家臣への給与を知行から蔵米に改めました。さらに、天和3年（1683年）には倹約と綱紀粛正を断行し、藩政の立て直しを図りました。

文化人としての側面も持ち合わせており、狩野常信に絵を学び、歌や書にも優れた才能を発揮しました。

正徳5年（1715年）7月9日、痢疾により59歳で亡くなりました。跡を次男の泰統が継ぎました。法号は英久院殿傑山紹俊大居士。墓所は愛媛県大洲市柚木の如法寺にあります。

系譜

父：加藤泰義（1629-1668）
母：奈辺 - 太田資宗の娘
正室：左牟 - 脇坂安政の次女
継室：以津 - 奈阿姫、酒井忠清の七女

子女
次男：加藤泰統（1689-1727）
六男：加藤泰都（1706-1782） - 旗本加藤泰茂の養子
七男：加藤泰広
女子：板倉昌信正室 - のち喜連川茂氏継室
女子：徳大寺実憲室

松の廊下事件に関する逸話

松の廊下刃傷事件において、浅野長矩が吉良義央に刃傷に及ぶ前に、加藤泰恒や出羽新庄藩主の戸沢正庸が、かつて日光社参・東照宮法会の際に吉良義央から受けたいじめについて浅野に語り、役目を終えるまで耐えるよう諭したという話が、『冷光君御伝記』や『赤穂義人録』などに記されています。

しかし、この逸話には疑問点が多く指摘されています。戸沢正庸が藩主となるのは宝永7年（1710年）であり、家督前の世子が日光社参や饗応役を務める例は通常ありません。また、寛文3年（1663年）の日光法会において、泰恒はわずか3歳であり、享保13年（1728年）の法会には既に死去しています。これらのことから、『冷光君御伝記』や『義人録』に記録されている内容には、誤りや時系列的な矛盾が含まれている可能性があり、信憑性は低いと考えられています。

関連事項

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