加藤良之助

加藤良之助：潜水艦のエキスパート、その生涯と戦い

加藤良之助（かとう りょうのすけ、1901年1月1日 - 1944年5月31日）は、大日本帝国海軍の軍人であり、特に潜水艦のエキスパートとして知られています。最終階級は海軍少将。

生涯

愛知県出身の加藤は、1920年（大正9年）に海軍兵学校を卒業（48期、171名中27番）。翌年には海軍少尉に任官し、潜水艦を専門とする士官としての道を歩み始めます。

潜水艦専攻士官として

加藤は、潜水艦長としての経験を通じて、その知識と見識が高く評価されていました。中佐時代には、伊73、伊62、伊74、伊1と、4隻もの潜水艦で艦長を歴任しています。

甲標的の開発と性能実験

1932年（昭和7年）、呉海軍工廠で開発が進められていた特殊潜航艇、通称「H金物」（後の甲標的）の性能実験に、加藤は深く関わります。有人実験では実験委員に選ばれ、自ら遺書を認めて臨みました。実験の結果、外洋での航行に成功する一方で、水素爆発などの問題も発生。加藤自身は、甲標的の実用性に否定的な評価を下し、通信装置の未装備を問題視しました。

しかし、甲標的の開発は中断することなく進められ、搭載艦として千歳型水上機母艦の建造が開始されます。1938年（昭和13年）には、無線装置や空気清浄器の装着、舵の改良など、性能向上のための改良計画が決定。加藤は、呉海軍工廠附として、第二次試験にも参加しました。

訓練指導官としての貢献

1940年（昭和15年）11月、加藤は甲標的乗員の訓練指導官に任命され、第一期講習員に対する直接指導を開始します。訓練は、座学から始まり、机上襲撃演習、基礎訓練、母船からの発進訓練、碇泊艦襲撃訓練と、段階的に難易度を上げて実施されました。初期の洋上訓練は困難を極めましたが、8月には航行艦襲撃訓練に移行し、成功を収めます。加藤は、甲標的搭乗員の育成に大きく貢献しました。

真珠湾攻撃に際しては、甲標的の搭載・発進試験などの指導を行いました。

潜水隊司令として

1942年（昭和17年）6月、第六潜水隊司令に任命された後、第三十三潜水隊司令に転任。アリューシャン方面の守備を担当し、キスカ島方面の防衛にあたりました。

1943年（昭和18年）9月には、第五十一潜水隊司令に就任。呂百型潜水艦を率いてラバウルに進出し、南東方面艦隊の指揮下で作戦行動に入ります。しかし、1944年（昭和19年）2月のトラック島空襲により戦況は悪化し、第五十一潜水隊は先遣部隊に編入されました。

ナ散開線での最期

1944年、日本海軍は連合国との決戦に備え、あ号作戦を発動。第五十一潜水隊は、ナ散開線と呼ばれるマヌス島北方の海域に展開し、連合国の来攻を待ち受けました。加藤は甲SSB指揮官として7隻を率いましたが、米軍の対潜兵器ヘッジホッグによる攻撃を受け、次々と潜水艦が撃沈されます。加藤自身も、呂105に乗艦中に戦死しました。この一連の戦闘は、「ナ散開線の悲劇」として知られています。

加藤良之助は、潜水艦のエキスパートとして、甲標的の開発・訓練に尽力し、太平洋戦争では潜水隊司令として最前線で戦い抜きました。彼の生涯は、日本の潜水艦戦史における重要な1ページを刻んでいます。

履歴

1932年（昭和7年）11月15日 – 海軍少佐
1933年（昭和8年）10月3日 – H金物有人実験
1933年（昭和8年）11月15日 - 潜水学校教官兼呉海軍工廠潜水艦部員
1934年（昭和9年）夏 – H金物外洋実験
1937年（昭和12年）8月10日 – 伊号第七十三潜水艦長
1937年（昭和12年）12月1日 – 海軍中佐、伊号第六十二潜水艦長
1938年（昭和13年）11月1日 – 伊号第七十四潜水艦長
1939年（昭和14年）11月20日 – 伊号第一潜水艦長
1940年（昭和15年）7月6日 - 呉海軍工廠附
1940年（昭和15年）9月16日 - 伊号第一潜水艦長
1940年（昭和15年）10月30日 - 呉鎮守府附被仰付
1940年（昭和15年）11月25日 - 臨時伊号第九潜水艦艤装員長被仰付
1940年（昭和15年）12月20日 – 臨時伊号第九潜水艦艤装員長被免、臨時千代田乗組被仰付
1941年（昭和16年）2月1日 – 千代田乗組
1942年（昭和17年）6月20日 – 第六潜水隊司令
1942年（昭和17年）7月31日 - 第五艦隊司令部附
1942年（昭和17年）8月13日 – 第三十三潜水隊司令
1942年（昭和17年）11月1日 – 海軍大佐
1942年（昭和17年）11月5日 - 兼呂号第六十八潜水艦長
1943年（昭和18年）3月16日 - 免兼職呂号第六十八潜水艦長
1943年（昭和18年）5月25日 - 兼呂号第六十四潜水艦長
1943年（昭和18年）9月1日 – 第五十一潜水隊司令

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