加賀橋立

加賀市加賀橋立：北前船主の繁栄を今に伝える重要伝統的建造物群保存地区

加賀市加賀橋立（かがしかがはしたて）は、石川県加賀市に位置する、歴史的な風情が色濃く残る地区です。南北約550メートル、東西約680メートル、約11ヘクタールの範囲が、国の重要伝統的建造物群保存地区として選定されています。加賀市には、加賀東谷と加賀橋立の2つの重要伝統的建造物群保存地区が存在します。

北前船とともに発展した船主集落

江戸時代中期まで、この地は半農半漁の茅葺民家が点在する集落でした。しかし、その後、北前船の船主が現れるようになり、江戸時代後期から明治時代中期にかけて、大阪と北海道の間を往来する船主や船頭が多く居住する集落へと発展しました。最盛期には100隻以上の北前船を擁し、1796年（寛政8年）の記録には42名、1809年には49名もの船主が名を連ねています。

1872年（明治5年）には、橋立大火に見舞われ、集落の約6割が焼失する甚大な被害を受けました。しかし、北前船の廻船業がまさに最盛期であったため、速やかに復興し、以前にも増して豪壮な家屋が再建されました。

明治時代後半になると、汽船や鉄道、電信といった新たな交通・通信手段の発達により、帆船である北前船は徐々にその役割を終えていきました。北前船の数は減少し、船主たちは他の業種への転換を余儀なくされ、北海道や神戸などへ移住する者も現れました。しかし、1916年（大正5年）に博文館から発行された大衆雑誌『生活』には、「日本一の富豪村」として、江沼郡橋立と小塩が紹介されています。

重要伝統的建造物群保存地区としての選定とその後

2005年12月27日、加賀橋立は、近世の地割を良く保持し、豪壮な家屋や特徴的な石垣などが残っている点が評価され、種別「船主集落」として国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。

さらに、2017年4月28日には、加賀橋立を含む全国の北前船寄港地・船主集落が、文化庁の日本遺産に認定され、その文化的価値が改めて認識されました。

加賀橋立の建造物の特徴

加賀橋立の船主屋敷は、主屋が棟の高い切妻妻入で、屋根は赤茶色の瓦葺き、外壁には船板を再利用した堅板が用いられています。屋敷を囲むように板塀や土蔵が配され、淡緑青色の笏谷石が使われている石垣や敷石と赤瓦のコントラストが美しい景観を作り出しています。起伏に富む地形に展開する船主屋敷群は、当時の面影を色濃く残しています。

当保存地区の特色は、廻船問屋などが立ち並ぶ一般的な「港町」ではなく、船主の邸宅が立ち並ぶ「船主集落」である点です。橋立の北前船主型の家の基本は、加賀農家型の切妻妻入りの二階建てで、「オエ」と呼ばれる広間が特徴的です。有力な北前船主の屋敷では、仏壇が二つ設けられていました。

赤瓦と「オエ」

橋立の赤瓦は、「南加賀系瓦」と呼ばれ、他の加賀南部地域の瓦とは異なる特徴を持っています。古い瓦は釉薬が薄いため、光沢が少なく、焼きむらや歪みのあるものも見られます。現存する船主の家44軒のうち、39軒が赤瓦、2軒が黒瓦、3軒がトタン屋根となっています。

「オエ」は、建物の中で最も大きな部屋で、天井が高く、囲炉裏がありました。梁が剥き出しになっているのが特徴の板の間で、間仕切りも襖ではなく板戸や帯戸が用いられていました。食事室、居間、村の寄り合いなど、多様な用途に使われていました。

主な公開施設

北前船の里資料館
蔵六園 - 登録有形文化財(建造物)
忠谷家 - 重要文化財
出水神社
福井別院橋立支院
久保彦助邸 - 北前船主屋敷
木村素衛・有香ふるさと記念館

アクセス

JR北陸新幹線・IRいしかわ鉄道線 加賀温泉駅下車 キャンバス 「北前船の里資料館」バス停下車
北陸自動車道 片山津インターチェンジ もしくは 加賀インターチェンジ下車

周辺情報

橋立漁港
加佐ノ岬
尼御前岬
加賀温泉郷

ゆかりのある人物

平出喜三郎 ‐ 北前船主
久保彦兵衛 - 北前船主
西出孫左衛門 - 北前船主
西出朝風 - 歌人
西出大三 - 彫刻家
木村素衛 - 哲学者・教育学者
木村有香 - 植物学者

加賀市加賀橋立は、北前船の歴史と文化を今に伝える貴重な場所です。ぜひ一度訪れて、その独特な景観と歴史に触れてみてください。

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