助川海防城

助川海防城：異国船の脅威と天狗党の乱の舞台

助川海防城は、江戸時代後期に常陸国多賀郡助川（現在の茨城県日立市助川町）に築かれた日本の城です。文化13年（1816年）頃から常陸沖に異国船が頻繁に出没するようになり、海防の必要性が高まったことから築城されました。しかし、その歴史は短く、天狗党の乱の戦場となり焼失してしまいました。現在は、その跡地が茨城県指定史跡および茨城百景として保存されています。

築城の経緯：異国船の脅威への備え

文化13年（1816年）、徳川斉脩が水戸藩8代藩主となると、常陸沖にはイギリスの捕鯨船をはじめとする異国船が頻繁に姿を現すようになりました。これを受け、水戸藩は海防体制を強化します。文政12年（1829年）に徳川斉昭が9代藩主となると、その動きはさらに加速しました。天保3年（1832年）には海防係が設けられ、山野辺義観が海防御用係に任命されます。そして天保7年（1836年）、助川への築城が決定し、義観に1万石を与え、海防総司に任じて居城させることが決定しました。

当時、一国一城令により新たな築城は原則として禁じられていましたが、佐竹氏時代の古城である蓼沼館の修築という名目で幕府に願い出て、築城の許可を得ました。しかし、天保の大飢饉などの影響で工事は遅延し、義観が247名の家臣を率いて入城したのは、同年12月のことでした。築城工事が完了したのは天保12年（1841年）で、普請金は4000両を要しました。

天狗党の乱と落城：動乱の時代の終焉

元治元年（1864年）4月、水戸藩の支藩である宍戸藩主・松平頼徳は、水戸藩主・徳川慶篤の命を受け、水戸での騒乱鎮圧に乗り出します。しかし、頼徳は尊王攘夷派である天狗党（筑波勢）と合流することになります。幕府は同年6月に筑波勢追討令を発令し、頼徳らは那珂湊で佐幕派の諸生党と交戦します。同年8月、頼徳は助川海防城第3代城主・山野辺義芸に援軍を要請。義芸はこれに応じ水戸へ進軍しますが、諸生党に水戸城への入城を拒否され、助川海防城へ帰還します。

諸生党からの報告を受けた幕府は、助川海防城への討伐軍を派遣します。山野辺軍は応戦しますが、同年9月、義芸は幕府軍に投降。城に残った残党は抵抗を続けましたが、最終的には城に火を放って逃走し、助川海防城は築城からわずか28年で灰燼に帰しました。

城郭：海防に特化した構造

助川海防城は、多賀郡助川の大平山の古城跡に建てられました。本丸の標高は約110m、海岸線までの直線距離は約2kmと、海防を指揮する上で理想的な立地でした。軍奉行の山国喜八郎が設計監督を務め、幕府に提出された設計書には、屋敷構え、土蔵、穀蔵、長屋、表門、居宅入口門、柵門（裏口）、武器庫2棟、二階付遠見番所、居宅二階付物見、柵矢来などが記載されています。また、義観は養正館や鉄砲教練場などを設け、城郭としての機能を充実させました。

しかし、これらの建造物のほとんどは天狗党の乱で失われ、現在遺構として残っているのは、本丸表門の礎石と鳩石のみです。現在、本丸跡は城跡公園、二の丸跡は日立市鳩が丘さくら福祉センター、三の丸跡は日立総合病院や日立市立助川小学校などとなっています。

養正館：文武両道を重んじた教育機関

天保8年（1837年）、水戸の藩校である弘道館に先駆けて、家臣の子弟教育のために養正館が開設されました。館名は、正道を修め養うという意味で中国の易経に由来します。文武両道を教授しましたが、海防城という特性上、特に武技に重点が置かれました。

現地情報：アクセスと公開状況

• - 所在地：茨城県日立市助川町
• - 交通アクセス：JR常磐線「日立駅」より茨城交通日立オフィスバス城南台行きで「鳩ヶ丘」下車。常磐自動車道日立中央インターチェンジより10分
• - 一般公開状況：助川城跡公園は無料で立ち入り可能です。

ギャラリー

[助川海防城跡の画像1]
[助川海防城跡の画像2]
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参考文献

• - 日立市史（日立市）

関連項目

• - 茨城県指定文化財一覧

外部リンク

• - 助川海防城跡保全会
• - 茨城県教育委員会　いばらきの文化財一覧
• - 日立市　日立の観光案内
• - 観光いばらき

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