勅旨省

勅旨省の概要

勅旨省（ちょくししょう）は、日本の律令制度において、奈良時代後期に設置された特別な官庁です。この機関は主に天皇および上皇に近侍し、勅旨（天皇の命令）の実施を円滑に行うことを目的としていました。また、上皇の家産の経営に関する業務も担っていました。

歴史的背景

孝謙天皇が病気で淳仁天皇に譲位した後、道鏡による祈祷により孝謙天皇は回復し、再び政治に介入するようになります。このことにより、天皇と上皇の間には対立が生じはじめました。そこで、762年に上皇の命により勅旨省が設立されました。この機関は上皇の官房機関として機能し、太政官を介さずとも必要な調達業務を行うことができました。

勅旨省は上皇が再び即位した際にもその機能を維持し、道鏡政権において重要な権力機関として存在し続けました。光仁天皇が即位した後は、徐々に規模を縮小しつつも、依然として調達機関としての役割を果たしました。

官制と人員構成

勅旨省の官制については未解明な点も多いですが、一般的に考えられているのは、卿・大輔が各1名、少輔・大丞・少丞・大録・少録が各2名の定員であったということです。記録上、勅旨卿として名前が知られているのは、779年に在任中に亡くなった藤原縄麻呂のみです。彼の在任は、勅旨省の中でも特に注目すべき時期でありました。

道鏡政権と勅旨省の廃止

道鏡政権下では、勅旨省だけでなく他の多くの巨大な官庁が乱立していました。これらの機関は朝廷財政に大きな負担をかけており、そのため782年に行政改革の一環として勅旨省は廃止され、業務は勅旨所に引き継がれることになりました。時の流れとともに、蔵人所の設置が進むと、勅旨省の業務はさらに縮小し、最終的には消滅に至ったのです。

紫微中台との関係

勅旨省は光明皇太后の命令を伝える紫微中台を模したものと考えられています。孝謙上皇の家産には、光明皇太后が管理していた遺産も含まれており、このような背景が勅旨省の設立に影響を与えたと推測されます。勅旨省は短いながらも、日本の政治史において重要な役割を担っていた官庁であり、その存在は歴史的に意味のあるものとして語り継がれています。

参考資料

• - 日本の官制や奈良時代の政治の動向について学ぶことで、勅旨省の位置付けをより深く理解することができます。

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