勘解由使

勘解由使：平安時代の行政監査官

概要

勘解由使（かげゆし）は、日本の律令制下において、地方行政の監査を目的として設置された重要な令外官です。和名を「とくるよしかんがふるのつかさ」、唐名を「勾勘」と呼びました。平安時代初期、国司の交替に伴う事務引継ぎをめぐる争いを解決し、地方行政の質を高めるために創設されました。太政官の北西、中務省の南に位置する勘解由使庁に設置され、当初は地方国司の監査が主な業務でしたが、後に内官（京都の各官職）の監査にも範囲が広がっていきました。

設置の経緯と変遷

797年（延暦16年）頃、桓武天皇の時代に創設されたとされています。国司の任期満了時に前任者から後任者への事務引継ぎを証する解由状（げゆじょう）の監査を通じて、不正や紛争を抑制することが主な役割でした。しかし、806年（大同元年）には一旦廃止され、観察使にその役割が移譲されました。その後、国司交替時の紛争が再発したため、824年（天長元年）に勘解由使は再設置されました。

再設置後は、監査対象が内官にも拡大され、事務引継ぎが不調に終わった場合には不与解由状（ふよげゆじょう）を作成する業務も追加されました。勘解由使による監査は「勘判」と呼ばれ、その記録は『政事要略』にも残されています。平安中期以降は、官職の世襲化（家職化）が進み、勘解由使の役割は変化していったと考えられています。一説には、受領による地方支配の強化に伴い、受領の活動を監督する役割が重要性を増していったともされています。平安末期頃まで、監査機関としての機能を維持していたと考えられています。

職務と組織

勘解由使の主な職務は、解由状の監査、紛争処理、そして官吏の交替に関する法規集である交替式（こうたいしき）の編纂などでした。組織は長官1名（正五位下相当）、次官2名（従五位下相当）、判官3名（従六位下相当）、主典3名（従七位下相当）、および史生、書生、使掌、使部などから構成されていました。長官には、参議や左右大弁といった高官が任命されることもありました。

歴史的意義と影響

勘解由使は、地方行政の透明性と公正性を確保するために重要な役割を果たしました。国司の不正を抑制し、中央政府による地方支配を強化する役割を担っていました。また、解由状の監査を通じて、行政手続きの標準化にも貢献したと考えられます。平安時代後期における役割の変化については、諸説ありますが、少なくとも受領の活動を監視する役割は重要なものだったと推測されます。勘解由使の存在は、日本の行政制度の進化と安定に貢献したと言えるでしょう。

関連事項

勘解由使に関連する事項としては、受領、勘解由小路、勘解由小路家、按察使、観察使、刺史、国王巡察使、連邦管区などが挙げられます。特に、勘解由小路家は、日本の戸籍に記載される姓の中で最長のものの1つとして知られています。これらの関連事項を理解することで、勘解由使の役割や歴史的背景をより深く理解することができます。

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