勝忠男

勝 忠男（かつ ただお、1926年 - 2006年7月17日没）は、日本の著名な興行師であり芸能プロモーターです。大阪府の出身で、主に大阪市を本拠とする大手芸能プロダクション、松竹芸能の創業者の一人として知られ、同社の会長や社長を歴任しました。

経歴と会社設立

1947年に立命館大学法学部を卒業した勝忠男は、大手映画会社である松竹の創業者の一人、白井松次郎が経営する千土地興行（後の日本ドリーム観光）に入社しました。ここで戎橋松竹の支配人を務めるなど、興行の世界に深く関わります。1954年に千土地興行を退いた後、芸人を斡旋する芸能事務所、新生プロダクションを主宰します。

そして1958年、松竹のもう一人の創業者である大谷竹次郎（白井松次郎の実弟）の協力を得て、秋田實や藤井康民らが運営していた上方演芸と合流する形で、松竹新演芸を設立しました。これが現在の松竹芸能の前身となります。同社は1962年に松竹芸能と社名を改めました。

「お笑いの松竹」を築く

松竹芸能を設立した勝忠男は、道頓堀角座を活動の中心に据え、数多くの人気お笑いタレントを育て上げ、「お笑いの松竹大国」と称される一大勢力を築き上げました。特に、同社第1号タレントとなった「かしまし娘」をはじめ、中田ダイマル・ラケット、ミヤコ蝶々、藤山寛美、レツゴー三匹といった昭和を代表するスターたちを世に送り出しました。

1965年には、関西の芸能事務所としては先駆けとなる東京進出を果たし、これはライバルである吉本興業よりも早い時期のことでした。これにより、松竹芸能は吉本興業と並び称される関西を代表する大手芸能事務所へと発展していきました。

その後も、笑福亭鶴光、笑福亭鶴瓶、横山たかし・ひろし、酒井くにお・とおる、オセロ、ますだおかだ、アメリカザリガニ、安田大サーカスなど、多岐にわたる人気芸人たちを育成し、日本の演芸界に貢献しました。

経営者としての厳しさ

芸能界の発展に尽力した一方で、勝忠男は企業経営者として非常に厳しい一面も持ち合わせていました。会社の経営方針に従わない芸人やタレントに対しては、たとえ彼らが大物であったとしても容赦なく専属マネジメント契約を解除するという形で、会社から離れさせることもいとわなかったとされています。その事例としては、

多額の借金を抱え破産した藤山寛美との専属契約解除
師匠である笑福亭鶴光との仕事観の相違から破門された当時の笑福亭笑光（後の嘉門タツオ）との専属契約解除
* 自身の父である6代目笑福亭松鶴の一周忌記念落語会を無断で欠席した5代目笑福亭枝鶴との契約解除

などが知られています。これらのエピソードは、勝忠男が単なる興行師ではなく、組織を運営する経営者として冷静な判断を下す人物であったことを示しています。

晩年と死去

長年にわたり松竹芸能を率いた勝忠男は、2004年8月に45年間務めた社長職から退き、会長に就任しました。そして2006年7月17日、肺炎のため大阪市内の病院で逝去しました。享年80でした。

その生涯は、関西お笑い界の隆盛を支え、多くの才能を開花させた功績と、組織を守るための厳しい決断を下した経営者としての側面が共存するものでした。彼の生涯は、1991年にMBS制作・TBS系で放送された「藤山寛美物語」で近藤正臣によって演じられています。

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