勢場ヶ原の戦い

勢場ヶ原の戦い：大内氏と大友氏の激突

勢場ヶ原の戦い（せいばがはるのたたかい）は、天文3年（1534年）4月に、中国地方の大名である大内義隆と、豊後の大名である大友義鑑との間で、豊後国大村山付近（現在の大分県杵築市山香町山浦近辺）で行われた合戦です。

名称について

この戦いは、以下の様な様々な名称で呼ばれています。

勢場ヶ原の戦い
勢場ヶ原合戦
大牟礼山の戦い
大牟礼合戦
大村山の戦い
大村山合戦

大牟礼山、大村山は「おおむれさん」と読み、大内軍が陣を構えた場所であることから、戦闘名としても用いられます。

戦いの経緯

戦国時代初期、大内氏は九州北部の豊前、筑前に勢力を持っていました。その勢力範囲は、東は石見・安芸、西は筑前、肥前、筑後など広範囲に及びました。これは、豊後守護であり、北九州を抑えようとしていた大友氏にとって、脅威以外の何物でもありませんでした。15世紀から16世紀前半にかけて、豊前や筑前などを舞台に、大友氏と大内氏の間で小規模な勢力争いが繰り返されていました。大内氏は大友氏と戦いながら、筑後の少弐氏などとも戦い、北九州における覇権を強めていきました。

大内義興の死後、息子の義隆が後を継ぐと、義隆は各地を転戦していた陶興房を九州に派遣し、北九州を攻略するように命じました。1532年から1533年にかけて、筑前柑子岳城の陥落や肥前筑紫氏の降伏など、筑前・肥前方面で大内氏の優位が確立しつつありました。

1534年、大内義隆は、周防に帰還していた興房を大将とする3,000余りの軍を下関に送り、大友氏の本拠地である豊後の平定を狙いました。大内軍は進軍し、豊前宇佐郡糸口原に布陣し、大友方の出方を待ちました。

大友義鑑は、国東吉弘城主の吉弘氏直、寒田親将を大将とする2,800余の兵を豊前大村山に送り込み、大内軍の豊後侵攻に対抗させました。総勢5,800（鹿鳴峠の軍勢を入れると6,100）の軍勢が4月、豊後、豊前の国境に集結し、合戦が始まりました。

勢場ヶ原の戦いの詳細

大友軍は1,000騎を大村山上に、豊前・豊後を結ぶ道の立石峠に木付親実（木付鎮秀の祖父）と田北鑑生の1,000騎、地蔵峠に志手泰久と野原昌久の800騎を布陣させました。また、本軍とは別に大神鎮氏と林鎮治の300騎も鹿鳴越に陣を構えました。

大内軍は間者を使い大友軍の動きを調べ、その動向を把握したり、虚報を流して大友軍を翻弄しました。宇佐郡地頭の佐田氏の主、佐田朝泰の進言を容れ、佐田越えを経て4月6日早朝、勢場ヶ原に抜け、大村山に籠もる大友軍の奇襲を試みました。

「敵軍天より下れり」と仰天した大友軍は混乱しました。広瀬裕則が立石・地蔵の両峠を守る軍勢を急遽呼び戻し、坂落としにて大内軍を蹴散らそうと提言しましたが、氏直は敵軍が疲労していること、小勢でも勝利を得ることができると考え、この提言を却下しました。そして血気にはやり山を駆け下り敵軍めがけて突進してしまいました。やむなく大友軍もこれに続きました。突撃した大友軍は親将が杉重信（長門守、架空の人物）を一騎討ちで討ち取るなど、初期は善戦しましたが、数で勝る大内軍は鶴翼の陣に切り替え、前後左右から少数の大友軍を攻め、壮絶な死闘が繰り広げられました。先頭に立って陣頭指揮をとった氏直は、矢が馬に当たり転落し、徒歩で戦いましたが、矢疵を受けて倒れました。さらに白兵戦にて大友主軍はほぼ壊滅し、氏直を助けようとした寒田親将、広瀬裕則以下が戦死しました。大内軍は凱歌を上げて一息入れました。

立石、地蔵峠に残っていた1,800の軍勢は「弔い合戦」と称し反撃を開始しました。午前11時頃より各地で奇襲、急襲を繰り返しました。彼らのほとんどが地元出身だったこともあり、大内軍を翻弄しました。緒戦の勝利に油断していた大内軍は対抗できず、すぐに崩れて大敗し、大人数が討たれ、主将の陶興房も負傷しました。逆転敗北となった大内軍は寄藻川沿いに豊後高田方面へと退却し、海路周防に撤退しました。

結果的に大内軍が撤退したため、戦略的には大友軍の勝利となりましたが、大友軍も二人の総大将を失い、本軍が崩壊していたことから、戦術的には「引き分け」と分類されます。

戦いの結果とその後の影響

その後も両国間では交戦が続きましたが、天文7年（1538年）に室町幕府第12代将軍・足利義晴の仲介を受けて和睦し、結果として大内義隆による北部九州の覇権が確立されました。

この戦いの後、大友・大内間の大規模な衝突はなくなり、和平が実現すると両国間での衝突自体もほぼなくなりました。その後、大内義隆が陶隆房（陶晴賢）に討たれる（大寧寺の変）と、大友氏が一挙に勢力を伸ばし、また一時大内側についていた龍造寺氏が独立したことで大内氏は北九州での勢力をほとんど失い、これによって北九州の覇権は大友氏が獲得しました。

現在の状況

現在、杵築市山香町に「勢場ヶ原古戦場」が残っているほか、大村山山頂には吉弘氏直、寒田親将などの墓石があります。

参考文献

『図説・戦国合戦集』（学研、2001年）
『大村陣勢場合戦記』

外部リンク

勢場ヶ原の合戦 大内軍との一大攻防戦
寒田親将

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