北原理雄

北原 理雄（きたはら としお）は、日本の都市計画およびまちづくり分野で長年にわたり活躍する研究者です。

経歴

1947年5月15日、横浜市に生まれました。東京大学工学部都市工学科で学び、1970年に卒業。その後、同大学大学院工学系研究科博士課程に進み、1977年に修了、工学博士の学位を取得しました。研究者としてのキャリアは、名古屋大学工学部での助手職から始まり、その後、三重大学工学部助教授を経て、1990年からは千葉大学大学院工学研究科の教授を務めました。長年の教育・研究活動を経て、千葉大学名誉教授の称号を授与されています。

研究と著作

専門は都市計画とまちづくり。都市が抱える様々な問題や、人々の生活と都市空間との関わり、魅力的なまちづくりの手法など、幅広いテーマで研究を展開してきました。多くの研究者と共同で成果を発表しており、代表的な共著には以下のようなものがあります。

『実現されたユートピア』（鹿島出版会、1980年）
『都市設計』（「新建築学大系」17、彰国社、1983年）
『国際比較による大都市問題』（ぎょうせい、1990年）
『都市の個性と市民生活』（岩波講座「都市の再生を考える」3、岩波書店、2005年）
『観光の社会心理学』（北大路書房、2006年）
『公共空間の活用と賑わいまちづくり』（学芸出版社、2007年）

これらの著作からは、都市構造、設計論、国際的な視点からの問題比較、市民生活との関連性、観光、公共空間の活用といった多角的な視点から都市やまちづくりに取り組む姿勢がうかがえます。

翻訳活動

北原氏の特筆すべき業績の一つに、海外の都市計画や建築に関する重要な専門書を多数翻訳し、日本国内に紹介した貢献があります。先進的な理論や実践事例を伝えるこれらの翻訳は、日本の都市研究や実務に大きな影響を与えました。主な訳書は以下の通りです。

マーティン・ケンツレン 著 『アーバン・ゲーム』（SD選書85・鹿島出版会）
ゴードン・カレン 著 『都市の景観』（SD選書98・鹿島出版会）
ダンカン・マキントッシュ 著 『現代のコートハウス』（SD選書110・鹿島出版会）
フーベルト・ホフマン 著 『都市の低層集合住宅』（鹿島出版会）
アービッド・ベンソン 著 『遊び場のデザイン』（鹿島出版会）
ケヴィン・リンチ 著 『知覚環境の計画』（鹿島出版会）
ケヴィン・リンチ 編 『青少年のための都市環境』（鹿島出版会）
ポール・ランプル 著 『古代オリエント都市』（井上書院）
ワード＝パーキンズ 著 『古代ギリシアとローマの都市』（井上書院）
ヤン・ゲール 著 『屋外空間の生活とデザイン』（SDライブラリー・鹿島出版会、1990年） - 『建物のあいだのアクティビティ』（SD選書258・鹿島出版会、2011年）として改題
バーナード・フリーデン、リーン・セイガリン 著 『よみがえるダウンタウン アメリカ都市再生の歩み』（監訳、鹿島出版会、1992年）
シリル・ポーマイア 著 『街のデザイン 活気ある街づくりのシナリオ』（鹿島出版会、1993年）
ヤン・ゲール 著 『人間の街 公共空間のデザイン』（鹿島出版会、2014年）
アニー・マタン、ピーター・ニューマン 著 『人間の街をめざして ヤン・ゲールの軌跡』（鹿島出版会、2020年）
マシュー・カーモナ、クラウディオ・デ・マガリャエス、レオ・ハモンド 著 『パブリックスペース 公共空間のデザインとマネジメント』（鹿島出版会、2020年）
ディビッド・シム 著 『ソフトシティ 人間の街をつくる』（鹿島出版会、2021年）

特に、ケヴィン・リンチやヤン・ゲールといった、世界の都市計画・デザイン分野で権威とされる研究者の著作を、長年にわたり継続的に紹介してきた功績は大きいと言えます。これらの翻訳を通じて、空間の知覚、人間中心のデザイン、公共空間の重要性といった現代のまちづくりにおける重要な視点が、日本国内に浸透する上で貢献しました。

研究、教育、そして翻訳活動を通じて、北原理雄氏は日本の都市計画・まちづくり分野の学術的発展と実践の双方に、多大な貢献を果たしています。

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