北向観音

北向観音について

北向観音は、長野県上田市の別所温泉に位置する天台宗の寺院です。本坊である常楽寺の伽藍の一部として、同寺によって所有・管理されています。歴史は古く、平安時代初期の天長2年（825年）に円仁（慈覚大師）によって常楽寺とともに開創されたと伝えられています。

歴史

創建以来、北向観音は幾度かの火災に見舞われ、その都度再建されてきました。9世紀には火災の伝説が残っており、安和2年（969年）には平維茂によって大伽藍として大改修が行われましたが、木曽義仲の兵火により焼失しました。その後、源頼朝によって再興され、鎌倉時代の建長4年（1252年）には北条国時（塩田陸奥守、塩田国時）によって再建されたとされています。

江戸時代には、元和7年（1694年）に参道脇にあった長楽寺が廃絶したため、常楽寺の直轄となりました。正徳3年（1713年）に再び焼失しましたが、8年後の享保6年（1721年）に現在の堂が再建されました。その後も度々修復が加えられ、昭和36年（1961年）には増改築が行われ、善光寺の本堂と同じ「撞木造り」となりました。

名称の由来と信仰

北向観音という名称は、その名の通り、お堂が北向きに建てられていることに由来します。この配置は、「北斗七星が世界の依怙（よりどころ）となるように、我もまた一切衆生のために常に依怙となって済度をなさん」という観音の誓願によるものと言われています。また、善光寺が来世の利益をもたらすのに対し、北向観音は現世の利益をもたらすとされ、両方を参拝することでより大きなご利益が得られると信じられています。そのため、善光寺のみの参拝は「片参り」になるとも言われています。

境内の見どころ

観音堂に隣接する温泉薬師瑠璃殿は、火災後の文化6年（1809年）に地元の薬師講によって再建されました。また、愛染堂の近くには、縁結びの霊木として崇められている愛染かつらの巨木（樹高22m）があります。この愛染カツラは上田市指定天然記念物にも指定されています。

アクセス

北向観音へのアクセスは、上田電鉄別所線の別所温泉駅が最寄り駅となります。

周辺の寺院

北向観音のある塩田平周辺は、「信州の鎌倉」とも呼ばれ、中世の文化財が数多く残されています。これは、かつて塩田北条氏の拠点として栄えたことによります。

主な周辺寺院としては、国宝に指定されている八角三重の塔がある安楽寺、同じく国宝である三重の塔を有する大法寺、重要文化財の三重の塔がある前山寺、重要文化財の薬師堂がある中禅寺、重要文化財の三重の塔がある信濃国分寺、そして龍光院などがあります。

関連情報

北向観音は、善光寺や別所温泉と深い関わりがあります。また、半田孝海、半田孝淳といった人物や、紅葉伝説にも関連があります。

外部リンク

• - 北向観音・常楽寺
• - 北向観音堂

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