北宋社

北宋社は、日本の出版社です。その起源は、生田耕作や由良君美らが参加していた文芸雑誌『牧神』を発行していた牧神社に遡ります。牧神社が倒産した後、同誌で営業・広告を担当していた渡辺誠が中心となり、新たな出版社として北宋社が設立されました。

北宋社は、椎名誠の『わしらは怪しい探検隊』や末井昭の『素敵なダイナマイトスキャンダル』など、独自の視点を持つ作家の作品を数多く刊行しました。特に、椎名誠の『わしらは怪しい探検隊』は、椎名が率いる探検グループ「東ケト会」のルーツとなった本として知られています。

また、北宋社は「研究読本シリーズ」も刊行し、カート・ヴォネガット、フィリップ・K・ディック、橋本治といった作家に焦点を当てた研究書を出版しました。これらの研究読本は、各作家の作品世界を深く掘り下げた内容で、多くの読者の支持を得ました。

橋本治は、北宋社から小説、エッセイ、評論、漫画評論、対談集など、幅広いジャンルの著作を刊行しました。小説『暗野』、エッセイ『シンデレラボーイ シンデレラガール』（糸井重里が装画を担当）、評論『秘本世界生玉子』、漫画評論『花咲く乙女たちのキンピラゴボウ』『熱血シュークリーム』、糸井重里との対談集『悔いあらためて』などが主な著作として挙げられます。

北宋社には、高橋丁未子という編集者が在籍していました。彼女は、橋本治や末井昭の著作を手がけ、北宋社の出版活動に大きく貢献しました。また、三田格は、20代前半という若さで『あぶくの城』や『吾が魂のイロニー』の編集に携わりました。

北宋社を巡っては、筒井康隆との間でトラブルも発生しました。筒井は、自身の虚実ないまぜの小説『巨船ベラス・レトラス』の中で、北宋社が筒井の短編集を無断で刊行したと告発しました。このトラブルは、出版業界における権利関係の難しさを示す事例として知られています。

北宋社は、大手出版社とは異なる独自の路線を歩み、個性的な作家や作品を世に送り出してきました。その出版活動は、日本の出版文化に多様性をもたらしたと言えるでしょう。

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