北投温泉

北投温泉：歴史と文化が香る台湾の温泉街

台北市北投区に位置する北投温泉は、台湾を代表する温泉地として知られています。別名新北投温泉とも呼ばれ、豊かな歴史と文化、そして独特の雰囲気を持つ魅力的な観光地です。

天然ラジウム温泉の恵み

北投温泉の最大の特徴は、天然のラジウム泉であることです。硫黄を多く含む強酸性の温泉は、pH1.4～1.6と強い酸性を示し、独特の硫黄臭が温泉街全体に漂います。この温泉は古くから湯治場として利用され、人々の健康増進に貢献してきました。

歴史の息吹：先住民から現代まで

北投温泉の歴史は古く、台湾原住民のケタガラン族が「パッタウ」（巫女を意味する言葉）と呼んでいたことに始まります。その後、スペイン人による硫黄交易、清朝時代の硫黄採掘を経て、1896年に大阪商人である平田源吾氏によって最初の温泉旅館「天狗庵」が開業しました。日露戦争時には日本軍の療養所となり、台湾有数の湯治場としての地位を確立していきます。

1905年には日本人学者岡本要八郎氏によって北投石が発見されました。北投石は、ラジウムを含む湯の花が長い年月をかけて石灰化した希少な鉱物で、世界では北投と秋田県の玉川温泉でのみ産出されます。この発見は、北投温泉の価値をさらに高めることとなりました。同年には、「湯守観音」を祀る鉄真院（現普済寺）も創建されています。

1913年には北投温泉公共浴場（現北投温泉博物館）と北投公園が完成し、温泉街はさらに発展を遂げます。戦前にはモダンな建物が立ち並び、ハイカラな温泉街として人気を博し、昭和天皇（当時皇太子）も訪れています。戦後、中華民国政府による公娼制度の導入を経て、1979年の廃止、そして陳水扁台北市長時代の健全化政策により、現在は家族連れでも安心して楽しめる観光地として再生を遂げました。2010年には日本旅館「加賀屋」が「北投加賀屋」として開業するなど、現代にも進化を続けています。

温泉街の風情と主要スポット

新北投駅から地熱谷にかけては、日本統治時代の面影を残す建物が立ち並び、独特の風情を醸し出しています。数多くの旅館やホテルが軒を連ね、週末には多くの観光客で賑わいます。台北市中心部からのアクセスも良好なため、日帰り旅行にも最適です。

主な観光スポットとしては、高温の源泉が湧き出す地熱谷（かつては温泉卵が有名でしたが現在は禁止）、歴史ある共同浴場である瀧乃湯や星乃湯、北投公園、北投温泉博物館、北投文物館、普済寺、不動明王寺などが挙げられます。

アクセスと今後の展望

アクセスは台北捷運新北投支線新北投駅下車、またはバスが利用可能です。また、陽明山方面へのロープウェイ建設も計画されており、今後の更なる発展が期待されます。

北投温泉を舞台にした作品

北投温泉は、映画やドラマの舞台としても数多く登場しており、その魅力を物語っています。例として、『カミカゼ野郎 真昼の決斗』（1966年）、『花嫁のれん』（2011年）、『テルマエ・ロマエ ネットでガチャガチャ』（2012年）などが挙げられます。

北投温泉は、歴史と文化、そして自然の恵みが融合した、魅力あふれる温泉街です。台北を訪れた際は、ぜひ足を運んでみてください。

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