北政所

北政所（きたのまんどころ）

北政所とは、平安時代における三位以上の公卿の正室に与えられた称号であり、特に豊臣秀吉の正室である高台院を指すことが一般的です。この称号は、正室としての地位や権限を象徴するものであり、歴史的な背景を持っています。以下にその成り立ち及び関連事項について詳述します。

概説

北方と住居形態

平安時代の貴族たちは、寝殿造りと呼ばれる独特の邸宅で生活していました。この邸宅は、複数の家屋が渡り廊下でつながった構造をしており、正殿としての「寝殿」は公の場として機能していました。その北側には「北対」という私的空間があり、ここで主の正室である北方が家政を執り行っていました。このように、正室が重要な役割を担っていたのは、貴族たちが婿取婚を基本としていたため、正室の実家が邸宅の所有権を持っていたからです。

政所の設立

平安時代には、三位以上の公卿が自邸内に家政を司る事務所を設けることが許可されていました。これが「政所」と呼ばれるもので、その名は「家政を司る所」という意味から来ています。正室がこのように管理を行う役割を持つことは、当時の家族制度や社会構造と深く関係しています。

北政所の称号の成立

三位以上の公卿が邸宅を持ち政所を開設することで、正室は「北政所」と称されるようになりました。初めはすべての三位以上公卿の正室がこの名で呼ばれていましたが、平安中期以降、格式が整い、北政所は特に摂政または関白の正室に与えられる称号となりました。これにより、北政所の地位はより限定されたものとなりました。

各論

平清盛の娘たちの場合

平安末期に摂関家が分裂し、五摂家が成立すると、複数の北政所が存在することも珍しくありませんでした。『平家物語』の中では、平清盛の娘たちが次々と名家に嫁ぎ、中には摂政や関白の正室になる者もいました。例えば、北政所として名前が挙がる盛子や完子はそれぞれ異なる摂政の正室として記されています。

三条西実隆の娘の場合

室町時代後期において、北政所の称号はますます公式な訳ではなくなりました。新たに任命された摂関の正室になる際、その人選は年齢や家系によって異なるため、北政所の宣下が行われるまでに時間を要することがありました。実際、三条西実隆の日記においては、彼の娘保子が北方となった後、関白の補任から長い間北政所の称号が与えられなかった事例が記されています。

秀吉の北政所と大政所

戦国時代が終わりを迎え、豊臣秀吉が関白に任命されると、彼の正室、高台院が「北政所」と呼ばれるようになりました。彼女はこの称号を持つ初めての摂家出身者ではない正室と見なされ、これ以降「北政所」は特に彼女を指す固有名詞として定着しました。また、正室に贈られるこの称号に対して、摂政関白の母に贈られる称号は「大北政所」と呼ばれ、後に「大政所」と略され、秀吉の母に用いられたのがその由来です。

まとめ

北政所は、平安時代から現代に至るまで、日本の歴史における重要な女性の地位を表す称号です。その変遷を通じて、日本の貴族社会や家族制度がどのように機能していたのかを知る手がかりとなります。

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