北斗星 (列車)

北斗星（ほくとせい）は、1988年3月13日の青函トンネル開業を機に誕生した、上野駅と札幌駅を結ぶ寝台特別急行列車です。東北本線や津軽海峡線などを経由する総距離1,214.7キロメートルという長大な旅路を、約16時間かけて夜通し走り、日本の首都圏と北海道を直通で結びました。豪華な個室寝台、本格的な食堂車、ロビーカーといった充実した設備を備え、「日本初の豪華寝台特急」と称されるなど、夜行列車として高い人気を誇りました。JRグループの定期旅客列車としては最長距離を運行した列車であり、2015年8月にその歴史に幕を下ろすまで、多くの人々の旅を彩り、そして長年親しまれた「ブルートレイン」の営業運転の終焉を飾る存在ともなりました。

北斗星の運行ルートは、上野を出発し、東北本線、いわて銀河鉄道線、青い森鉄道線を北上。青森からは津軽海峡線を経て青函トンネルを抜け、北海道側の函館へ。函館からは函館本線、室蘭本線、千歳線を経由して札幌へと至る長距離ルートでした。途中の停車駅は、本州内で大宮、宇都宮、郡山、福島、仙台、そして北海道内で函館、森、八雲、長万部、洞爺、伊達紋別、東室蘭、登別、苫小牧、南千歳でした。災害などにより、常磐線や上越線経由で迂回運行したこともあります。本州内では東北新幹線と並走する区間もあり、スケジュールの都合に合わせて新幹線との乗り換えを選択することも可能でした。

列車には、様々なタイプの客室が用意されていました。最上級のA寝台個室「ロイヤル」は、シャワーやトイレ、洗面台を備えた贅沢な空間で、ホテル並みのサービスが提供されました。その他、A寝台「ツインデラックス」（2人用）やB寝台個室の「デュエット」（2人用）、「ソロ」（1人用）といった個室寝台が主体で、プライベートな空間での快適な移動を求める利用者に人気でした。また、通路とカーテンで仕切られた従来の開放式B寝台も連結されており、多様なニーズに対応しました。

旅の大きな楽しみの一つが、7号車に連結された食堂車「グランシャリオ」での食事でした。フランス語で「北斗七星」を意味するこの食堂車では、ディナータイムには予約制で本格的なフランス料理や懐石御膳を味わうことができ、夕食後には予約不要のパブタイムで軽食やお酒を提供しました。朝食は和食と洋食から選べ、夜行列車の旅を一層特別なものにしました。また、6号車には全ての乗客が自由に利用できるロビーカーがあり、ソファでくつろいだり、シャワー室（有料）を利用したりすることができました。

この長距離列車を牽引したのは、各区間を管轄するJR東日本とJR北海道の個性豊かな機関車たちでした。上野から青森までは、当初EF81形電気機関車が、後にEF510形500番台電気機関車が担当しました。青函トンネル区間を含む青森から函館間は、ED79形電気機関車がその任を担いました。そして北海道内の函館から札幌間は、青い「北斗星色」に塗装されたDD51形ディーゼル機関車が重連で力強く牽引しました。これらの機関車のリレーも、北斗星の旅の見どころの一つでした。

北斗星の運行本数は時代と共に変わりました。当初一日三往復でしたが、1989年には全て定期化。その後、「カシオペア」登場に伴い一往復が臨時化され二往復に。さらに2008年からは北海道新幹線建設工事の影響で一日一往復となりました。運行末期には車両の老朽化と北海道新幹線の走行試験開始を理由に、2015年3月のダイヤ改正での定期運行終了が発表されました。しかし、多くのファンに惜しまれ、また車両の検査期間が残っていたことから、2015年4月から8月にかけて臨時列車として運行が続けられました。そして、2015年8月23日、上野駅に到着した最終列車をもって、北斗星は27年半の運行に終止符を打ちました。この最終運行時には、両終着駅に多くの人々が集まり、別れを惜しむ光景が見られました。北斗星の廃止は、日本の鉄道史における「ブルートレイン」の時代の終焉を象徴する出来事でもありました。

「北斗星」という列車名は、夜行列車に天体名を用いる慣例に従い、夜空に輝く北斗七星や北極星に由来しています。一般公募で決定されましたが、その選考過程には得票数108位からの採用というユニークなエピソードがあります。廃止された車両の一部は解体されましたが、東京都中央区には北斗星の寝台を活用した宿泊施設（現在は休業）が、北海道北斗市には保存車両を活用したゲストハウスが設けられるなど、その記憶は様々な形で今に伝えられています。

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