北村遺跡

北村遺跡

北村遺跡は、長野県安曇野市に位置する、縄文時代後期から奈良・平安時代にかけての複合遺跡です。松本盆地の北端、犀川沿いの丘陵に位置しています。

概要

1987年から翌年にかけて、中央自動車道長野線建設工事に伴い、長野県教育委員会によって発掘調査が行われました。その結果、合計469基もの墓坑から、縄文時代後期（約4000～3500年前）の300体にのぼる埋葬人骨が検出されました。この発見は、当時の人々の埋葬習慣や社会構造を知る上で非常に重要な意味を持っています。

遺構

遺跡からは、各時代の様々な遺構が発見されています。

縄文時代

竪穴建物：58軒（うち柄鏡形敷石建物26軒）
墓壙：469基
屋外埋設土器：13点
配石：26基
土坑：352基
ピット群：5箇所
遺物集中：6基

これらの遺構から、当時の人々の住居、埋葬、祭祀など、様々な生活の様子を伺い知ることができます。特に、柄鏡形敷石建物は特徴的な構造であり、当時の建築技術や意匠を知る上で貴重な資料です。

弥生時代

竪穴建物：1軒

弥生時代の遺構は少ないものの、この地域における弥生文化の存在を示唆しています。

奈良時代

竪穴建物：1軒
溝：2条
ピット：3基

奈良時代の遺構は、当時の集落の構造や生活様式を理解する上で役立ちます。

平安時代以降

竪穴建物：20軒
掘立柱建物：10棟以上
柵：6基
溝：29条
井戸：1基
馬墓：1基
遺物集中：2基
土坑など：427基

平安時代以降の遺構は、集落の規模が拡大し、生活基盤が整えられていった様子を示しています。特に、馬墓の発見は、当時の社会における馬の役割や地位を考える上で興味深い発見です。

遺物

出土した遺物は多岐にわたり、各時代の文化や技術を知る上で重要な情報源となっています。

土器・陶器類：縄文時代中期末〜後期中葉の縄文土器、弥生後期の弥生土器、土師器、須恵器、灰釉陶器、円面硯、有孔土器など
石器：石鏃、磨石、凹石、打製石斧、敲石、多孔石、石皿、台石、石錐、磨製石斧、削器、砥石、石錘、石剣、石棒、玉
土製品：土錘、土偶、小型土器、蓋、匙、玉、土鈴、耳飾、土器片円盤など
骨角牙製品：腕輪、垂飾、簪など
人骨
動物遺存体（獣骨）
炭化材

これらの遺物から、当時の食生活、狩猟、農耕、祭祀、装飾など、様々な側面を垣間見ることができます。

まとめ

北村遺跡は、縄文時代から古代にかけての複合遺跡であり、各時代の遺構や遺物が豊富に出土しています。これらの発見は、当時の人々の生活、文化、社会構造を理解する上で貴重な資料であり、日本の歴史を研究する上で重要な拠点となっています。

参考文献

長野県立歴史館『縄文人の一生-北村遺跡に生きた人びと-』長野県立歴史館〈1996年夏季企画展図録〉、1996年7月1日。doi:10.24484/sitereports.7905。 NCID BA34160034。
財団法人長野県埋蔵文化財センター『明科町内:北村遺跡（中央自動車道長野線埋蔵文化財発掘調査報告書11・本文編）』長野県教育委員会・日本道路公団名古屋建設局・長野県埋蔵文化財センター〈長野県埋蔵文化財センター発掘調査報告書14〉、1993年3月31日。doi:10.24484/sitereports.8139。 NCID BN09594715。
* 財団法人長野県埋蔵文化財センター『明科町内:北村遺跡（中央自動車道長野線埋蔵文化財発掘調査報告書11・図版編）』長野県教育委員会・日本道路公団名古屋建設局・長野県埋蔵文化財センター〈長野県埋蔵文化財センター発掘調査報告書14〉、1993年3月31日。doi:10.24484/sitereports.7538。 NCID BN09594715。

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