北条政村

北条政村：鎌倉幕府を支えた知将

北条政村（ほうじょう まさむら）は、鎌倉時代前期から中期にかけて活躍した北条氏の一門です。鎌倉幕府第2代執権・北条義時の五男として生まれ、第7代執権として幕府を支えました。執権を退いた後も連署として重きをなし、特に元寇という未曽有の国難においては、その豊富な経験と卓越した判断力で幕府を主導しました。

生涯

誕生と元服

元久2年（1205年）6月22日、畠山重忠の乱で重忠親子が討伐された日に政村は誕生しました。父・義時が23歳で、長男泰時、次男朝時に続く三男として誕生しました。元服の際、烏帽子親を務めた三浦義村から一字をもらい、政村と名乗ります。この時、義時は和田義盛を滅ぼした和田合戦が起こった年であり、義村との関係を深めることで、御家人たちの懐柔を図ったという見方もあります。

伊賀氏事件

貞応3年（1224年）、父・義時が急逝すると、母・伊賀の方が政村を執権にしようと画策した伊賀氏事件が起こります。しかし、異母兄である泰時の計らいにより、政村に累が及ぶことはありませんでした。この事件は、執権交代を機に影響力を維持しようとした政子が、義時後妻の実家である伊賀氏を排除するために仕組んだという説もあります。

連署就任と執権就任

伊賀氏事件後、政村は北条一門として執権となった兄・泰時を支え、延応元年（1239年）に評定衆、翌年には筆頭となります。宝治元年（1247年）には、三浦氏が滅亡した宝治合戦が起こりますが、この時の政村の動向は不明です。建長8年（1256年）には連署に就任し、時頼の死後、14歳という若さで執権となった時宗を補佐するため、文永元年（1264年）に7代執権に就任します。

元寇と晩年

文永5年（1268年）、蒙古国書が到来すると、政村は執権を時宗に譲り、再び連署となります。元寇の危機には、政村は幕府の重鎮として、時宗を支えながら対応にあたりました。文永9年（1272年）の二月騒動では、時宗と共に名越氏を粛清し、幕府の権力基盤を強化します。晩年は常盤院覚崇と号し、文永10年（1273年）に69歳で生涯を閉じました。

人物・評価

政村は、その沈着冷静で温厚な人柄から、周囲からの信頼も厚く、高い教養を持ち、和歌や典礼にも精通していました。特に和歌においては、その才能は高く評価され、多くの歌が勅撰集に収められています。また、公武の協調関係を維持することにも大きく貢献しました。政村は、若い頃に伊賀氏事件に巻き込まれ、謀反の疑いをかけられた経験から、慎重かつ思慮深い性格を形成したと考えられています。

文化人としての一面

政村は、文化人としても優れていました。京都の公家衆とも親交があり、彼らから影響を受けました。特に和歌の才能は高く評価されており、北条一門の中では最多となる四十首の歌が勅撰集に入集しています。また、比企氏の怨霊に取り憑かれた娘の治癒を祈願し、蛇苦止堂を建立したという逸話も残っています。このことから、政村の家族想いな一面も窺い知ることができます。

補足

近年、石井清文によって、長時出家後に執権に就任したのは政村ではなく時宗とする説が提唱されています。この説が正しければ、政村は連署として時宗を補佐したことになりますが、当時の記録が残っていないため、真相は不明です。いずれにせよ、政村が鎌倉幕府に大きく貢献した人物であることに変わりはありません。

まとめ

北条政村は、鎌倉幕府の重鎮として、執権、連署を務め、元寇という国難に際しては、その豊富な経験と知恵で幕府を支えました。また、文化人としても優れ、和歌や典礼にも精通し、多くの歌を勅撰集に残しました。政村は、鎌倉幕府において重要な役割を果たした人物であり、その功績は後世に語り継がれています。

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