畠山重忠の乱

畠山重忠の乱

畠山重忠の乱は、鎌倉時代初期の元久2年（1205年）に、武蔵国（現在の神奈川県横浜市旭区）で起こった武力衝突事件です。この乱は、鎌倉幕府の有力御家人であった畠山重忠が、北条時政の陰謀によって討たれた事件であり、鎌倉幕府の権力闘争における重要な転換点となりました。

背景

鎌倉幕府を開いた源頼朝の死後、幕府内では権力闘争が激化しました。梶原景時の変や比企能員の変といった事件を経て、北条時政が実権を握るようになります。畠山重忠は、武蔵の有力な武士団を率いる立場であり、頼朝からの信頼も厚かった人物です。しかし、時政は武蔵の支配権を確立しようと目論み、重忠の勢力を排除しようとします。武蔵は、鎌倉防衛の要となる重要な地域であり、多くの武士団が存在していました。時政は、比企氏を滅ぼした後に、武蔵国務職に任じられ、行政権を掌握します。この動きは、武蔵の武士団の棟梁である重忠との対立を深めることになりました。

経過

平賀朝雅と重保の対立

元久元年（1204年）、京都で開かれた宴席で、重忠の嫡男である重保と、時政の後妻の娘婿である平賀朝雅との間で口論が起こります。その直後、時政の子である政範が急死し、重保と朝雅の争いの報告が同時に鎌倉に届きます。時政は、重忠父子を勘当しますが、後に和解します。しかし、この和解は表面的なものでした。

畠山氏討伐の動き

翌年、鎌倉に不穏な動きが見られるようになり、重忠の従兄弟である稲毛重成が鎌倉に呼び出されます。その後、朝雅は重保に悪口を言われたと牧の方に訴え、牧の方はそれを重忠父子の謀反として時政に伝えます。時政は、当初は反対したものの、牧の方の兄である大岡時親に説得され、重忠討伐を決意します。鎌倉では、重保が討たれ、重忠を討伐するための大軍が派遣されます。

二俣川の戦い

重忠は、鎌倉の異変を知り、自らの館を出発しますが、二俣川で討伐軍に遭遇します。重忠は、自らが謀反人として扱われていることを知り、潔く戦うことを選びます。重忠は、わずかな手勢で、北条義時率いる大軍を迎え撃ちます。激戦の末、重忠は討ち死にし、その子重秀も自害します。

その後

重忠の死後、義時は、重忠が謀反を企てていなかったことを時政に伝えます。時政は、重忠の所領を討伐軍に与えますが、後に失脚し、京にいた朝雅も討たれます。残された重忠の所領は、重忠の妻に与えられ、その妻は足利義純に再嫁し、畠山氏の名跡を継承します。これにより、平姓秩父氏の畠山氏は滅亡しました。

乱の結果と影響

この乱は、北条義時が父時政を失脚させ、幕府の実権を握るきっかけとなりました。また、武蔵は北条氏の支配下に置かれ、その後の執権政治の安定化に繋がりました。重忠は、『吾妻鏡』において、その忠義ぶりを称賛される一方で、義時の弁護のための作為とも考えられています。しかし、近年では、義時が時政の意思を拒否できた可能性は低いという説も出てきています。重忠終焉の地には石碑が建てられており、その史跡は横浜市の登録文化財となっています。

参戦武将

北条軍

北条義時
北条時房
三浦義村
和田義盛
佐久間家村
足利義氏
小山朝政
安達景盛
宇都宮頼綱
愛甲季隆
長沼宗政
平盛綱

その他多数。

畠山軍

畠山重忠
畠山重秀
榛澤成清
本田近常
その他少数。

文化財

鶴ヶ峰周辺の史跡は横浜市登録地域文化財に登録されています。

参考文献

本郷和人『新・中世王権論』新人物往来社、2004年
永井晋『鎌倉幕府の転換点 「吾妻鏡」を読みなおす』日本放送出版協会、2000年
貫達人『畠山重忠』吉川弘文館〈人物叢書〉、1987年
菊池紳一 著「畠山重忠」、石井進 編『もののふの都 鎌倉と北条氏』新人物往来社〈別冊歴史読本〉、1999年

関連項目

牧氏事件
畠山氏 (平姓)
吾妻鏡
名跡

外部リンク

* 鎌倉武将 畠山重忠- 横浜市旭区公式ホームページ

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